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会社は一体誰のものか!?ーー 渋沢栄一vs岩崎弥太郎の対立

【連載】「あの名言の裏側」 第4回 渋沢栄一編(3/4) お金の稼ぎ方、使い方には人柄が表れる

いかに自分が苦労して築いた富だ、

といったところで、

その富が自分一人のものだと思うのは、

大きな間違いなのだ

──渋沢栄一

写真:近現代PL/アフロ

 渋沢栄一の生きた明治から大正にかけて、日本は近代的な資本主義社会へと急速に変貌を遂げていきました。その過程で財閥が勢力を拡大し、ビジネスの世界だけでなく、社会全体に大きな影響力を持つようになります。

 ちなみに財閥とは、特定の一族が独占的に資本を握り、組織・企業グループを形成して経営を支配する形態です。当時、三井、三菱、住友、安田のいわゆる「四大財閥」のほか、古河、浅野、川崎、藤田といった財閥が実業界を牽引するようになっていました

 そんななか、三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎氏と渋沢氏は、実業家としてまったく異なる信念を持っており、何かにつけて対立したり、相反する意見をぶつけ合ったりする関係にありました。

 岩崎氏が興した郵便汽船三菱会社の社規第一条に、次のような記述が見られます。

「当社はしばらく会社の名を命じ、会社の体をなすといえども、その実全く一家の事業にして、他の資金を募集し結社するものと大いに異なる。故に会社に関するる一切のこと、全て社長の特裁を仰ぐべし」

 要するに「会社という形態をとっているけど、実態は岩崎家の事業であることを忘れるな。みんなでお金を出しあって、みんなで物事を決めていくような会社とは違うぞ」「会社に関するすべてのことは社長(つまり岩崎弥太郎)が最終的に判断する。勝手にビジネスを進めるな」ということです。会社の利益も損失も、すべては社長のものであり、岩崎家のもの……というわけです。そんな三菱財閥の方針は「社長独裁主義」と評されたりします。

 対して渋沢氏は、前回も触れたように「儲けることはいいことだ。でも、利益は独占することなく、社会に還元しなければならない」という考え方を持っていました。また、「公益を追求し、会社組織としての使命を果たすために幅広く資本と人材を集めて、事業を進めていく。人材は身分や家柄に関係なく、優秀であればどんどん登用して、仕事を任せていく」といった、企業の公共性や社会的責任をとても重要視していました。

 渋沢氏も岩崎氏も“日本の近代化を推し進めて経済を発展させ、欧米列強に負けない国をつくる”という大志は同じでした。しかし、経営者として、実業家としてのスタイルがまったく違っていたのです。道徳や仁義を重んじるビジネスを旨とした渋沢氏に対して、岩崎氏は個人の才覚と強烈なリーダーシップでビジネスを展開していったといえます。

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漆原 直行

うるしばらなおゆき




1972年東京都生まれ。編集者・記者、ビジネス書ウォッチャー。大学在学中より若手サラリーマン向け週刊誌、情報誌などでライター業に従事。ビジネス誌やパソコン誌などの編集部を経て、現在はフリーランス。書籍の構成、ビジネスコミックのシナリオなども手がける。著書に『ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない』、『読書で賢く生きる。』(山本一郎氏、中川淳一郎氏と共著)、『COMIX 家族でできる 7つの習慣』(シナリオ担当。伊原直司名義)ほか。

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