【島田雅彦独占インタビュー 第1号<br />「自民党に任せるしかない」という<br />思考停止の有権者の数は想像以上に多かった】 | BEST T!MESコラム

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島田雅彦独占インタビュー 第1号
「自民党に任せるしかない」という
思考停止の有権者の数は想像以上に多かった

小説家・島田雅彦が語るこのふざけた世相を生き抜くためのサバイバル・テクニック第1回

合理的な生き方。そんなものは、すべて人工知能に任せておけ。 小説家・島田雅彦が語る文学、政治、サヨクとウヨク、酒、旅、恋愛……このふざけた世相を生き抜くためのサバイバル・テクニック第1回。

 

思考停止の投票結果にモノ申す!

島田雅彦が参院選を改めて振り返る

最新刊エッセー『筋金入りのヘタレになれ』(ベスト新書)のなかでも、ウヨク化する日本の現状を憂い、物申す作家・島田雅彦氏にさっそく参院選の結果についてから聞いてみた。

――今回の参議院選挙ですが、自民党が55、公明党が13、おおさか維新の会が7議席を獲得して全部で75議席。非改選の議員と合わせると憲法改正案提出ができる3分の2議席を確保したことになりましたが、島田先生はこの結果をどうご覧になりますか。

 島田  政権交代を訴える選挙ではなく、自民党の専横を牽制するための野党の主張が通らなかった。「今回だけは野党に投票」という戦略的投票行動を理解しない人が多かったという印象です。「自民党に任せるしかない」という思考停止の有権者の数は想像以上に多かった。

 改憲のようなクリティカルな争点を前面に打ち出さないで、隠したりぼやかしたりすると与党に有利になる。問題を問題視しないおとぼけ作戦、あるいは正面衝突を避けた逃げ切り作戦にしてやられたという無力感でいっぱいです。

 これで自民党がやろうとしている憲法99条の改正に一歩近づいたわけです。これができれば緊急事態宣言、つまり憲法を停止することが可能になる。

――9条ではなく?

 島田  9条は改憲勢力が改正を言い出しにくいんです。敗戦時、天皇制を残すということの交換条件が戦争放棄、すなわち9条だったという歴史的経緯があり、天皇に関する1条の規定と9条の規定はセットになっています。

 実際、世論調査をしても9条の改正を言ったら勝てないことは自民党もわかっているのでしょう。その飛び道具として例の「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」という99条を改正しようとしているんですね。

 安倍晋三が言うように、戦後レジームから脱却したいというのであれば、アメリカの占領体制から外れることなのに、むしろそれを強化している。日米地位協定で縛られている日本の現状は、独立国としての体裁からはほど遠いわけです。

――それでも安全保障の問題はアメリカ抜きには考えられない。

 島田  アメリカに頼るしかないという思い込みが、無意識に深く刻まれてしまったんでしょうね。

――男と女の関係に例えると、ときどき脅したり暴力を振るったりする男だけど、他の荒くれ者から守ってくれるから好きなの、みたいな感じですかね。

 島田  この占領状態を甘受するという体質は改めようがないという状況下で、日本の自立とか、日本のプライドを主張しようとしたら、一種のヒステリーになるしかない。

 これだけ、アメリカに尻尾振ってくっついていくわけだから、魂のありかたとしては戦前に回帰することを許せということです。被占領状態にある不愉快を逆転するためには別のプライドを取り戻せるようなアクションが必要で、それが戦前への回帰。

 日本の古い家族観の復活とか、憲法改正へ向かう。支離滅裂で、そういった矛盾をいくら指摘したところで納得できる説明を拒否している。これはヒステリー以外の何ものでもない。

――ハンカチくわえて、「私悔しい! キーッ」ってなってる感じですね。

 島田  すごい紋切り型のイメージですね(笑)。ヒステリーを起こすのは女性だけじゃないですよ。

 

 選挙後の安倍首相は、今回の結果は、自民党が支持された。自民党が支持されたということは、憲法改正が支持されたということ。と、ワンパケージであることを強調。巷でよく聞かれるような「どこにも投票したい党がなかったしさ~」というようなゆるい会話とは相当に乖離した状況になりつつある。

『筋金入りのヘタレになれ』という、島田雅彦氏の発言に注目して、このふざけた世相を生き抜くためのサバイバル・テクニックを7日間に渡って学んでみたい。

 

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島田 雅彦

しまだ まさひこ

1961年東京都生まれ、川崎育ち。東京外国語大学ロシア語学科在学中の83年『優しいサヨクのための嬉遊曲』が芥川賞候補となり、作家デビュー。84年『夢遊王国のための音楽』で野間文芸新人賞。92年『彼岸先生』で泉鏡花文学賞。2006年『退廃姉妹』で伊藤整文学賞、08年『カオスの娘』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。10年下半期より芥川賞選考委員を務める。現在、法政大学国際文化学部教授。



最新刊エッセー『筋金入りのヘタレになれ』(ベスト新書)が好評。



 


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  • 2016.06.09