「方舟の天才」と呼ばれた丸藤正道 師匠・三沢光晴とリングへの強い想いを語る【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「方舟の天才」と呼ばれた丸藤正道 師匠・三沢光晴とリングへの強い想いを語る【篁五郎】

写真提供:プロレスリング・ノア

 

■師匠・三沢光晴への思い

 

 何度も名前が上がった丸藤の師匠・三沢光晴。彼は2009年にリング上の事故で帰らぬ人となった。2021年には13回忌を迎え、ノアではコロナ禍で観客を入れられなかったが配信メモリアルマッチを行った。

「いろいろな思いがあるんですけど、そこは普段あえて出さないようにしてるんで。13回忌ということで、自分の中で大切なものはしまうところはしまって、出すところは出して。お客さんが何か感じられるものを表現できればいい。三沢さんも重苦しいものは好きじゃなかったですし。明るくいきたいと思います」

 丸藤は、記者会見でこのように語った。師匠超えを果たすためにあえて別行動を取るようになった。ジュニアヘビー級で「ヘビー級よりもジュニアの方が面白い」と言われ、ノアで旋風を巻き起こす。その後、ヘビー級へ転向し、団体の象徴であるGHCヘビー級ベルトへの挑戦権も得た。王者は師匠・三沢光晴。師匠との対戦直前の心境はどんなものだったのか。

「今僕44歳なんですけど、あのときの三沢さんも44なんですよね。そうやって考えると、自分の中で非常に感慨深いものがあります。あの試合に関しては、思いというものに厚みが出てくるんですけど、今比べられるじゃないですか。そう考えていると、三沢さんって、やっぱりすごかったんだな。実際すごかったし、苦労していたんだなっていうふうになんか試合よりもそっちが強いですかね。

 僕は初めてシングルマッチやったのはディファ有明だったんです。そのとき最後ランニングエルボー受けたんですけど、その夜、もう頭ガンガンしちゃってご飯食べられなかったですね」

 三沢は当時社長とトップレスラーを兼任。コンディションは良くなかった。それでも丸藤を自身のオリジナル技・変形エメラルドフロウジョンで沈めた。丸藤は三沢超えを果たせなかったのである。

 今年(2022年)5月、外敵王者からの指名でGHCヘビー級戦の前に丸藤はこんなことを語っていた。

「1回も勝てずに三沢さんはいなくなってしまった。多分あの時の三沢さんは今の俺よりもコンディションが悪かったと思うんだよね。三沢さんがもうひと踏ん張りっていう形でやっていたのを思うと、自分も負けてられない」

 今でも三沢の魂を受け継いでいる。

 

写真提供:プロレスリング・ノア

 

■「できなかったことばかり」と述懐するほど苦悩した時期

 

 三沢が事故で亡くなってからノアは混乱を極めた。三沢亡き後、田上明が二代目の社長に就任。丸藤も副社長となった。しかしながら新体制発足後は苦難の連続であったといえる。

 まずは取締役相談役に就任した百田光雄が自らの人事案を受け入れられなかったことを理由に退団。続いては、三沢が存命中からノアをフロントで支えていた仲田龍氏(故人)がスキャンダルにより失脚。一社員へ降格となった。しかも観客動員も落ち込み、日本テレビの地上波中継も終了(日テレG+へ移行)し、収益も下がっていった。

 そのためリストラを敢行し、6名の選手とレフリーがノアを去ることになった。

 そんな中、副社長の丸藤はどんな思いでいたのだろう。

「俺がしっかりできなかったことが後悔です」

 それまで自分のことを「僕」と呼んでいた男が、初めて「俺」と言った。偽りなき本音が垣間見えた瞬間だった。

GMをやっていた(仲田)龍さんの期待に応えられなかった。それが大きな後悔です。もう少し会社とレスラーであったり、現場とのパイプ役だったりをしっかりやるべきだったことができてなかった。

 経営を学んだことがあるわけでもなかったし、会社の状況や、まだまだ先輩もたくさんいて、どうしていいかわかんなくなっちゃったのが正直なところです」

 丸藤が副社長に就任したのは、彼が30歳ころのこと。プロレスラーとして脂が乗ってくる時期であったが、リングでは小橋建太と秋山準がおり、大先輩を差し置いて意見をするのが難しい状況だったに違いない。

 それでも先輩へ厳しいことを言わなくてはならない状況もあっただろう。しかし丸藤はこう振り返った。

「結果できていなかったってことですよね」

 そんな苦しい経験をした後、何か得たものはあったのだろうか。

「会社側と選手側の考えとかは違うことが多々あったんです。そういうものを一つにしていかなくちゃいけないっていうふうにも思いましたね。それと会社の中がごちゃごちゃしてると表にもそういう雰囲気とか出ちゃうじゃないですか。

 そこで、みんなを一つにするっていうのが責任ある人間がやることだと思っているんです。当時はできていなかった。今なら後輩が多いからコミュニケーション取れると思います。

 前に副社長をやっていたときは、先輩や後輩にこれ言っていいのかな? これ言ったら刺激しちゃうかも? あれこれ考えていたら逆に周りと話ができなくなっちゃったかもしれません」

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「ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR” 2024」

2024年1月2日(火)東京・有明アリーナ大会

 

 

https://www.noah.co.jp/news/5259/

記事中に何度も出てきた有明アリーナ大会とは、「ABEMA presents NOAH “THE NEW YEAR” 2024」のことである。

★2024年12日(火) 開始:15:00 開場:13:30  会場:有明アリーナ

※ダークマッチの開始時間は1420分を予定しています。

丸藤正道選手はメインイベントで、アメリカの団体に所属する飯伏幸太選手(A.E.W)と対戦します。

チケットは

■電子チケット限定直前販売をイープラス電子チケット「スマチケ」にて行います。

 URLはこちら  https://eplus.jp/sf/word/0000001320

 販売期間 11(火)12時~12日(火)1600分まで

■当日券は会場当日券窓口にて12日(火)お昼1200分から発売にて発売中です。

当日はABEMAにて生配信も行う予定です。

https://abema.tv/channels/fighting-sports/slots/94uDyUQ5V9zVao

✳︎日程には追加・変更がございますことをご了承ください。変更の際には、プロレスリング・ノア公式ホームページ(https://www.noah.co.jp/)にてお知らせいたします。

篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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