自分が負の感情にのめりこんでしまったとき、その泥沼から脱するきっかけとは?【神野藍】
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第20回
【自分の感情を素直に吐き出せた瞬間】
いつも負の感情にのめりこんだ状況から脱するのは、ほんの些細なことがきっかけだ。そして、そのきっかけは思いがけないところからふってくる。それは誰かからの言葉であったり、本や映画との出会いであったり、内容は様々ではあるが、一度自分の中で腑に落ちてしまえば、憑き物がとれたみたいに急に回復するのだ。
今回はそれが彼女との旅行で、彼女の存在であった。夏の間も連絡すればすぐ会える距離感ではあったが、あれこれ思い悩んでいた私は頼るという選択肢をとれずにいた。今考えると「もっと早く連絡していれば」なんて思うけれど、日常から離れたからこそ、包み隠さずに自分の感情を素直に吐き出せたのだと思う。
ちょうど一つの夏が終わるのと同時に、この連載も二十回という節目を迎えた。これまでは過去の自分に対して真摯に向き合おうとしてきたが、たまには今この瞬間を生きる私に焦点をあてるのも悪くないと思い、自戒の意味も込めてこの話を書き残そうと決めた。きっとそれが少し先の未来にいる、私を救う手助けになると思うのだ。
文:神野藍
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「元エリートAV女優のリアルを綴った
とても貴重な、心強い書き手の登場です!」
作家・鈴木涼美さんも絶賛した衝撃エッセイが誕生
✴︎目次✴︎
はじめに
#1 すべての始まり
#2 脱出
#3 初撮影
#4 女優としてのタイムリミット
#5 精子とアイスクリーム
#6 「ここから早く帰りたい」
#7 東京でのはじまり
#8 私の家族
#9 空虚な幸福
#10 「一生をかけて後悔させてやる」
#11 発作
#12 AV女優になった理由
#13 セックスを売り物にするということ
#14 20万でセックスさせてくれませんか
#15 AV女優の出口は何もない荒野だ
#16 後悔のない人生の作り方
#17 刻まれた傷たち
#18 出演契約書
#19 善意の皮を被った欲の怪物たち
#20 彼女の存在
#21 「かわいそう」のシンボル
#22 私が殺したものたち
#23 28錠1シート
#24 無為
#25 近寄る死の気配
#26 帰りたがっている場所
#27 私との約束
#28 読書について1
#29 読書について2
#30 孤独にならなかった
#31 人生の新陳代謝
#32 「私を忘れて、幸せになるな」
#33 戦闘宣言
#34 「自衛しろ」と言われても
#35 セックスドール
#36 言葉の代わりとなるもの
#37 雪とふるさと
#38 苦痛を換金する
#39 暗い森を歩く
#40 業
#41 四度目の誕生日
#42 私を私たらしめるもの
#43 ここじゃないどこかに行きたかった
#44 進むために止まる
#45 「好きだからしょうがなかったんだ」
#46 欲しいものの正体
#47 あの子は馬鹿だから
#48 言葉を前にして
#49 私をほどく
#50 あの頃の私へ
おわりに