どんな状況でも「相手の理想になりきってセックスしてしまう癖」は未だに抜けていない【神野藍】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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どんな状況でも「相手の理想になりきってセックスしてしまう癖」は未だに抜けていない【神野藍】

神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第13回

 

 【セックスに対して何も感じなくなった・・・】

 

 それ以上に私が手を焼いているのは、セックスに対して何も感じなくなったことである。快楽というよりも、セックスに付随している喜びだったり、悲しみだったり、そういったものがあまり感じられないのだ。全ての感覚が鈍化している気がする。まあ、そうなるのも無理がない。

 だって「私」として、相手とセックスしていないのだから、しょうがないことである。

 

 仕事のとき、事前に与えられた情報をもとに「この子だったらこんな立ち回りをして、こんな風な言葉を相手に言うだろうな」と理想の女の子の存在を作り上げて、それをスタートの合図と共に「私」を消して、「理想の女の子」になりきってセックスしてきた。加えて、カメラが回っているのもあって、常に自分のことを第三者の視点から俯瞰するようにしていた。仕事としてはその方がしやすかったし、もちろん作品のクオリティは上がり、私の評価にもつながった

 しかしながら、その行為を何度も繰り返しているうちに、カメラが回っていないところでも同じことができるようになってしまった。セックスの最中に真っ先に浮かぶことは「こんな風にやられたいんだろうな」とか「いつこの言葉を言おうかな」ということばかりだ。そういった思考が身体に沁みついているのもあるが、元々人のことをじっと観察するタイプであったし、相手が期待するであろうことを感じ取るのは得意な方だ。台本が無くても同じようなことをするのは簡単で、それはどんなに好きな相手だろうが、どんな状況であろうが、相手の理想になりきってセックスしてしまう癖は未だに抜けていない。カメラなんて存在しないはずなのに、自分をセックスに参加してる当事者だと思うことができないのだ。

 

 過去に「セックス、完璧だよね。つくりものみたい」と言われたことがある。それはきっと悪気のない誉め言葉であったが、私にとっては「自分のセックスはまがい物なんだ」と突き付けられた気分であった。今もそこから抜け出せてはいない。引退したときは愛しい相手とだけセックスしていれば治ると思っていたが、案外そんなこともないらしい。すり減って鈍化した感情はなかなか戻ってはこない。恐ろしい話だ。

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神野藍

じんの あい

文筆家。元AV女優。

1999年生まれ。2020年5月、早稲田大学在学中に渡辺まおとしてAV女優デビュー。2022年5月、現役引退後は、文筆家・タレントとして活動中。好きな本は谷崎潤一郎『痴人の愛』。趣味はトレーニング。

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