「LGBT理解推進法案」が抱えるトランスジェンダー問題「女性と女性の飽くなき戦い」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「LGBT理解推進法案」が抱えるトランスジェンダー問題「女性と女性の飽くなき戦い」


6月8日、三重県で起こった事件が話題だ。女装して女性用浴場に侵入したとして、建造物侵入の疑いで、津市の職業不詳男(54)を現行犯逮捕したという。湯船に漬かっているのを別の女性客が気づき店員を通じて通報。駆けつけた署員がその場で逮捕した。男はスカートなどを身につけて侵入したとみられ、「私は女だ」と容疑を否認しているというのだ。トランスジェンダー問題を考える上で注目されている記事を再配信する。


米国フロリダ州で、性自認の議論禁止法にドラァグコミュニティが抗議集会を開いた(2023年4月25日)写真:アフロ

 

■「元男性のトランス女性」が女性刑務所に収監で大騒動

 

 夏になると、海や川やプールやと人々は大挙して涼みに行きますが、露出の高い布切れ一枚になり、いつもと同じ距離感で普通に会話を楽しめる光景は、改めて考えると非日常的ですよね。

 人というのは、建前さえあれば非日常的なことも、日常として受け入れるものなんだなと毎年感じております。

 さて、スコットランドで今年1月末、「元男性のトランス女性」が女性刑務所に収監されていることに、女性受刑者の安全を懸念する声が高まり、「元男性のトランス女性」が男性刑務所へ移送されました

 一見するとトランス女性差別だ!との声が一部界隈から聞こえてきそうですが、この受刑者「イスラ・ブライソン(31)」は男性として女性2人に性的暴行を加えた罪で捕まり、124日に有罪判決を言い渡された直後、自身がトランスジェンダーであると訴え、性別を女性に変更したことで、女性刑務所へ収監されたという経緯があります。

 活動家がトランスジェンダーのあらゆる権利を主張するまでは理解出来ますが、制度としてレイプ犯を女性刑務所に収監しちゃったっていうのは、恐ろしいことです。

 幸いにも、良識ある国民の声に後押しされる形で、早期に男性刑務所へ移送となりましたが、実際にこういったケースが起きるまで問題のある制度だと指摘がなかったのか気になるところです。

 なお、スコットランドは昨年12月に性別変更の法的手続きを簡略化する法案を可決したばかりでした。(1)

 

 トランスジェンダー(自分が認識する性別が異なる人々)問題をドライな視点で見ると、ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス)問題までさかのぼり、男性と女性の区別をなくそうとポリコレ活動家が躍進したのが、ひとつの分岐点だったように私は見えています。

 いまの世の中は、男性と女性を区別することで成り立っている社会構造にメスをいれながら、あらゆる分野に踏み込んで、差別的な要素の是正に取り組んでいます。

 日本でも、男性と女性の区別になっていた名称や制服などを差別的だとして是正しているのは記憶に新しいのではないでしょうか?

 こういった男性と女性を平等に扱う土台の上に、トランスジェンダー問題が展開されており、この土台があるため、ポリコレ活動家とトランス活動家はシナジー(お互いに作用し高め合う効果)が強くなっているように見受けられます。

 目立つ活動家に対して、ネット上では批判の声が大きいですが、活動家の影響力というのは馬鹿に出来ません。そして、シナジーの強い活動家たちが団結することで大きな波を生むことがあります。

 私はこういった背景から、諸外国でトランスジェンダー問題が持ち上がったときに、女性側へ活動家の支援が入りにくい現状があるのでは?と考えています。

 女性を代表する活動家が、「女性の立場を守るために区別をせよ」というのはポリコレ以前の社会に戻せという話に繋がりかねず、このあたりを整理した価値観がでてこなければ、私たちがトランスジェンダー問題をみるたび、「なんでそうなったの?」と違和感を覚え続けそうに感じます。

 偏見に満ちた活動家の意見を、議論を深めずに反映して制度を作ると、社会に「混乱と分断」をまねくことがあります。みなさんも海外のニュースや動画がネットで回って来て、「混乱と分断」が起きている様子を見ることがあるのではないでしょうか。

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谷龍哉

たに りゅうや

谷 龍哉(たに・りゅうや)

1983年生まれ。三重県伊勢市出身。ネット情報アナリストとして、インターネット上の社会事象や問題発生の経緯の情報収集、分析に従事。

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