「LGBT理解推進法案」が抱えるトランスジェンダー問題「女性と女性の飽くなき戦い」 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「LGBT理解推進法案」が抱えるトランスジェンダー問題「女性と女性の飽くなき戦い」

 

■トランスジェンダー問題のタブーになっている「個人の美醜概念」

 

 そして、トランスジェンダー問題のタブーになっていそうなのが「美醜概念(美しさと醜さの意味づけ)」です。

 どれだけ綺麗に言葉をつくろっても、トレンドに上がってくるトランス問題の多くには、美醜概念が反映されているように感じます。(スポーツ分野を省く性的な部分に関して)

 しかし、これもまた私自身の美醜概念に基づく感覚です。

 そもそもこういった感覚が良くないと正義棒でぶん殴られる話であり、言っちゃいけないのです。言っちゃいけないということは、議論が出来ないのです。

 しかし、こういった人の内面に関わるデリケートな部分を、誰も傷つかない形で議論することが私たちには求められており、ネットで誰もが自由に考えを発信できる現代では必要なことだと考えています。

 美醜概念は個人単位での差異が大きく、「ある物について、好きな人もいれば嫌いな人もいる。」という、当たり前のお話がまず前提としてあります。

 国が違えば美醜概念も異なります。美しさや醜さの基準と言うのは様々な要因によって変化するものでもあり、自分のなかにある基準が世の全てであると錯覚してはいけません。

 更に、法に認められた行為であれば、それを行う人物がどのような人物であったとしても犯罪者ではありません。

 そのため、不審な点がないにも関わらず、不快感によって犯罪者としてのリスクを考慮してしまうと、おかしな話になってしまいます。

 

 こいった問題で身近にあるのは、過剰な「〇〇ハラスメント」ではないでしょうか。

 何をしたらハラスメントだと言われるか判断が難しく、「男性にとって最善の選択肢は極力女性と関わらないことだ!」などといった意見をみることがあるほどです。

 感情に関わる生理的な反応はコントロールしようとしても難しく、世の中が変わったのだから、心を入替ていきましょう!などと言ったところで簡単に切り替えられることではないのも事実ではないでしょうか。

 

 いっぽうで、日本には「混浴」という文化が今も継承されています。

 混浴のお風呂に男性と女性が一緒にはいっていたところで誰も気にしません。

 しかし、女性専用のお風呂に男性がはいろうとすれば、それは犯罪行為であり、御用改めでしょっぴかれます。

 捕捉として、トランスジェンダー視点では公衆浴場について多様な思いや景色があり、「レインボー風呂ジェクト」の記事からその一端を見てとれることを添えておきます。

 混浴を例にあげましたが、私たちが暮らす社会では、事前にそういう場所だと分かっていれば思いのほか問題は生まれないのではないでしょうか?

 私は、雑に制度を作らずしっかり議論を重ねれば、混乱を最小限におさえながら移行期間を経て、トランスジェンダーを社会が受け入れることは可能だと考えています。

 そして、トランスジェンダーの方々と共に、なんらかの形で性別による区別のある施設を憂いなく利用可能になった社会で、改めてそれに関わる犯罪発生件数の増減や、社会施設の変容を踏まえた議論を進めていくのが今の時代なのかなと思います。

 ただし、多様性を受け入れて行くなかで、「安全性」をないがしろにすることがあってはならないのも事実です。

 トランスジェンダーに配慮した社会へ移行していくために、安全性を犠牲にすることがあってはなりません。

 雑な制度が出来れば、それを悪用しようとする犯罪者が増加するのは容易に想像できるため、安全性を確保しながら新しい制度に沿った施設づくりをしていく必要があるのではないでしょうか。

 LGBT問題を流行のようにとらえて、安全性を無視し、デザイン性を重視するような施設ばかりになることがあってはなりません。こういった施設が増えないよう声を大きくしていくことが大切です。(注5

 

 5月16日に自民、公明両党は与党政策責任者会議で、議員立法による「LGBT理解増進法案」の修正案を正式に了承しました。

 SNS上では問題視する声が多く、与党政策責任者会議でも意見が割れてたいたようですが、G7サミット前の提出を目指すあまり、議論を切り上げての提出になってしまった印象があります。

 世論からの注目も高く、国会でこの法案が通った場合、制度が正しい形になるのかを注視しながら、こちらも引き続き声を上げて行く必要があるように思います。

 

 ところで、男性専用のお風呂、更衣室、トイレなんかで、男性が使用中だろうがおかまいなしに女性従業員が清掃などのお仕事をしているのは日本以外でも一般的なんですかね

 ずっと違和感しかないですが、これも私の感覚でしかなく、問題になっていないのであれば普通のことなんだなと思うよう努めています。

 

文:谷龍哉

 

注)

(1) スコットランドの性別変更手続き簡易化、イギリス政府が法制化を阻止へ 2023117

https://www.bbc.com/japanese/64300147

(2) 「許すべきではない!」トランスジェンダー戦士の女子MMA参戦が物議! 元UFC王者は危険性を主張「不公平を生む」 2021.09.18

https://thedigestweb.com/topics_detail13/id=46616

(3)東京五輪、トランスジェンダー選手が競技初参加 専門家「男女別の見直しや公平性議論を」 2021728

https://www.tokyo-np.co.jp/article/119706

(4) 「男女共同参画社会」って何だろう?

https://www.gender.go.jp/about_danjo/society/index.html

(5) 「ホテル代もったいないから」歌舞伎町タワーのジェンダーレストイレが「パパ活現場」になっていた! 20230504

https://friday.kodansha.co.jp/article/309467

 

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谷龍哉

たに りゅうや

谷 龍哉(たに・りゅうや)

1983年生まれ。三重県伊勢市出身。ネット情報アナリストとして、インターネット上の社会事象や問題発生の経緯の情報収集、分析に従事。

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