トルコの超イスラーム保守派地域「チャルシャンバ地区」を歩いてみた |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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トルコの超イスラーム保守派地域「チャルシャンバ地区」を歩いてみた

 さて、街道に目を向けてみよう。チャルシャンバ地区の中心となる通りには、宗教関連の店が立ち並ぶ。店頭の木の棒が目に入り、思わず立ち止まった。この木の棒はミスワークと呼ばれる歯ブラシで、預言者が使用を勧めたためにこれで歯を磨くと良いとされている。この硬い棒でそのままで磨くわけではなく、先の方を歯で嚙んで、繊維状に柔らかくしてから磨くものだ。このように大量に売られているということは、おそらくこの地区の人々はミスワークで歯を磨くのだろう。私もかつて使用していたことがあるが、歯磨き粉を使わずとも場所を問わずに磨くことができるので重宝した。

 

 

 本屋のショーウインドウに目を向けると、なにやら同じ人物の表紙が多い。これらの表紙を飾るのは、マフムト・ウスタオスマンオールというスーフィーだ。このイスマイル・アー教団の初代シェイフ(指導者)であり、トルコのイスラーム保守派層に広く影響力を持っていたが、今年6月に亡くなった。葬儀の参列者が数十万人にも及んだことは、マフムト導師の影響力の大きさを物語っている。

 また、葬儀には現職のエルドアン大統領も参列したことが報じられた。エルドアン大統領とイスマイル・アー教団との関係は、公然の秘密と言うべきものらしい。というのも、エルドアン大統領が育ったのは、チャルシャンバの対岸にあるカスムパシャという地区。学生時代、彼はチャルシャンバのクルアーン教室に通っていたという。

 

 

 本屋の中には、宗教本がずらりと並ぶ。イスマイル・アーでなくとも、イスラームを学ぶ上で使用される書籍が豊富に揃っている。

 

 

 レジの横には、ズィクルのためのデジタルカウンターが売られていた。ズィクルというのは、神を想起しながら神の名を唱える行為を指す。その数を記録するためのカウンターだ。伝統的にはタスビーフという数珠が使われてきたが、最近はこのようなものも普及している。

 チャルシャンバの中心には、イスマイル・アー・モスクがある。教団の名前は、このモスクから取られたものだ。

 

次のページモスクを出て少し散策すると、何やら巨大な建物が目についた・・・

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袴田 玲

はかまた れい

袴田玲(はかまた・れい)
1997年静岡県生まれ、浜松北高等学校卒業。イランのアルムスタファー国際大学にてペルシア語・イラン=イスラーム文化・文明コース修了後、同志社大学神学部を卒業する。専門はペルシア文学、オスマン帝国の耽美文化。トルコのマルマラ・アナドル・イマーム・ハティプ高校で日本語教師として勤務する傍ら、アンカラ大学付属トルコ語学校にてトルコ語中級まで修了。現在はEDEP(イスラーム学卓越教育センター)奨学生。趣味で漫画を描く。

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