馬鹿でブスで貧乏なあなたは、とりあえず特別な人をひとり確保しよう【藤森かよこ】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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馬鹿でブスで貧乏なあなたは、とりあえず特別な人をひとり確保しよう【藤森かよこ】

馬鹿ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性

複数の女性と性的関係を持ち維持するために男性が実践すべき6点

 

 上記の興味深い体験談に加え、回答者は、「風俗には行きたくないのですが、とにかく複数の女性と定期的に関係を持ちたいです。それは身体の関係という意味合いですが、恋愛的な駆け引きも楽しみたいのです。どうすればその状態に持っていけると思いますか?」と尋ねる質問者に対して、その願望を実現させるために実践すべきことを主として6点挙げた。

 

 1点目。性交したい場合に、選ぶのは相手の女性であって、自分ではないのだから、女性が性交する気になるような自分を創り維持する。まず身だしなみに気をつける。口臭は最低。口腔内衛生に留意する。歯周病は治す。脱毛をして、体脂肪15%ぐらいを保つ。自分は太り散らかして、女性に美貌を求めるような姿勢ではだめ。

 

 2点目。男性はおおむね自分の価値を高く見積もり過ぎている。女性を精神的にも肉体的にも気持ちよくさせることに集中せずに、マンスプレイニング(mansplaining)するのは問題外。マンスプレイニングは、manexplainsplainの合成語で、男性が女性に対して、見くだしたような、自信過剰の、しばしば不正確な、過度に単純化された類のコメントをすることを意味する。これは、自信過剰と無知の産物でしかない。

 

 3点目。複数の女性と性関係を継続したいのならば、平等に接すること。女性ひとりひとり個性が違うのだから比較しない。その女性たちがつき合っている自分以外の男性のことを訊ねるなどという下品なことはしない。

 

 4点目。デートに備えて常に「ストーリー」を作る。「今日はどういう展開でいこうかな、とか相手も自分も飽きない装置は絶対的に必要」である。「楽しくて刺激的で成長できるセックスなり関係なり」を意識すること。

 

 5点目。やはり最後は人間性が大事。「絶世のイケメンだろうと、驚くほどのお金持ちだろうとやはり人間として面白みのない人や、お馬鹿さんや、面倒くさい人とは長続きしません」。関与するすべてのパートナーの同意を得て、複数のパートナーとの間で親密な関係を持つこと(ポリアモリー polyamory)は、自分が何をやりたいかではなく、相手が何を求めているかを考えなければならない。それができない人は、いい相手と遭遇できても、相手からつき合う価値がないと低く評価されるので、関係を継続させることができない。またポリアモリーは恋愛ではなく、疑似恋愛なので、自分をコントロールすることが必要。嫉妬や独占欲や支配欲は禁物。 

 

 6点目。避妊やSTDSexually Transmitted Diseases/性行為により感染する病気のこと)について勉強して、よく知っておくこと。定期的に性病検査をすること。想定外のことは起きるので、緊急避妊ピルやトリコモナス膣炎やカンジダ症候群の対処薬は一定数を入手しておくこと。そんなことは女が用意しておくものだなどという自分勝手な態度は、女性から軽蔑される。相手の女性のレベルが高いほど、そんな男は相手にされない。

 

 さて、この助言を読んで、質問者はどう感じたろうか。上記の6点が実践できるような知力とセンスと体力の持ち主ならば、あのような質問を他人にするようなお気楽で安易な依存性はないと思うのだが。

 

 

馬鹿でブスで貧乏でも、とりあえずやれることから試みよう

 

 回答者は、かなり難しい職場で働いていたのだが、私生活ではポリアモリーを楽しんでいたので、仕事で心が乱れることは稀だったそうだ。パワハラしてくる男性同僚がいても「ふーんこの人、多分セックスが下手なんだろうな~」と思い腹も立たなかったそうである。女性からお守りされてやっと立っている程度の安っぽい男に対しては、確かに腹も立たない。高度の知力と文明を持つ宇宙人が、地球の野蛮な人類に何を言われても、「類人猿が何をわめいてるんだか」と思うようなものだ。

 私は、Quoraの前述の質問と、それに対する非常に面白い回答を読んで感嘆した。やはり高度な情報を持てるだけの人的社会的環境に身を置くことができるだけの財力を持ち、知的水準の高い人々と交際して刺激を受けるような機会を手にするには、女性の場合は、それらの人々と楽しい会話ができるだけの教養や知力を持ち、かつ何よりも健康な美貌を持ち、それを維持できる自己鍛錬を継続しないといけないのだ。

 私のように、ブスでありスタイルが悪いことに開き直って、気ままに甘いものや炭水化物を食い散らかして、運動不足のままに太るにまかせているのでは、世間が狭いに決まっていた。未知の楽しい世界があることも知らずに、世の中にはもっと面白い気持ちのいい人々が存在するということも知らずに、あくせくとしていた。いやあ、この回答者の文章を10代の頃に読みたかったと、私は思った。そうしたら、もっと本気で頑張ったかもね。

 同じ時代の同じ国に住んでいても、このようなポリアモリーを実現させ、それを継続するための努力を惜しまないことを楽しめる人々もいる。一方では、自分の人生を自分で引き受ける責任と孤独を直視できずに、身近な他人に固執し、その他人の幸福について考える能力も余裕もなく、愛と性を地獄にしてしまうような人々もいる。

  現代は価値観が多様化していて、ほとんど無規範状態に近い。法に抵触しなければ何をしてもいいと思い込んでいる類の人間も多い。特に愛や性の問題については、同じ時代の同じ国に生きていても、個人によって、考え方や感じ方も様々だ。同じ時代に生きていても、思考においては、どう見ても原始人のような人もいる。搾取集金宗教組織に洗脳され切った中世人みたいな人もいる。18世紀の(今ではかなり無理ゲーだと判明している)西洋近代合理主義を信仰し、揺るがない自己を求める「遅れてきた近代人」もいる。愛と性のより自由で互恵的なありようを模索する21世紀人もいる。人類離れして、愛と性を超越した23世紀人みたいな人もいるかもしれない。

 しかし、まあ、馬鹿でブスで貧乏で平凡だけれども、いい人生を創りたい女性は、とりあえずは、この世界がまともな女性に与えがちな対人恐怖症から解放される契機となるような出逢いを諦めずに求めることが大切だ。そのような他人と良い関係を維持できるような自分創りが必要だ。ポリアモニーの前に、まずは「ひとり」確保だ。西川きよし師匠じゃないけれども、小さなことからコツコツと、だ。

 だから、Quoraで見つけたような「頭脳明晰で美貌で富裕なる人々の愛と性の魅惑のポリアモニーの自由と自律」については、拙著では書かなくていいと私は判断した。しかし、今となっては、参考までに書くべきだったかなとも思う。

 いろいろ考えて省きすぎて、濃縮ジュースみたいになってしまった『馬鹿ブス貧乏な私たちが生きる新世界無秩序の愛と性』だが、みなさま、できれば読んでやってください。

 

文:藤森かよこ

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課 程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。  

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