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ウクライナ戦争と近衛文麿の洞察【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」44

2022年6月18日、ゼレンスキー大統領が南部前線を訪問。

 

◆関心喪失は貧困への道

 

 ウクライナ戦争の話題など、もう飽きた?

 気持ちはよく分かります。

 

 勃発より4ヶ月半あまりが経過した今も、あいかわらず収拾のメドは立ちません。

 この展望のなさについて、図らずも示してくれたのが、同国のウォロディミル・ゼレンスキー大統領。

 大統領は627日、ドイツにおけるG7サミットでオンライン演説を行ったのですが、そこで「年内に戦争を終わらせたい」と述べました。

 

 記事によっては「年内に終わらせなければならない」となっていますが、どちらにせよ、6月末の時点における発言ですから、少なくともあと半年は戦争が続くと認めたにひとしい。

 ついでに「終わらせたい」ことと、年内に戦争が終わる見込みがあることは別物。

 しかも、年内に終わらせたい理由は何か?

 厳冬期に戦争を続けるのは大変だから。

 

 年内にはロシアを撃退できそうだとか、

 ロシアとの停戦交渉が合意にいたりそうだとか、

 そういう話ではまったくないのです!

 

 これでは仮に戦争が終わったとしても、春が来て暖かくなったら、また始まるんじゃないですかね?

 のみならずゼレンスキー、G7の首脳にたいして、年末までに戦争が終わるよう、最大限の努力をしてほしいと訴えました。

 

 当の努力とは、まずもって対ロシア制裁の強化を指すようですが、ウクライナへの軍事援助が含まれるのも確実。

 2022年後半、ウクライナにおける戦争や、それをめぐる国際対立が、いっそう激化する恐れは少なくありません。

 

 すでにアメリカでは、戦争終結にいたらないまま、ウクライナがロシアの制圧した地域と、そうでない地域に分断されるのではないかという見方も出ています。

 双方が疲れてくれば、休戦ぐらいは成立するだろうが、以後も長期にわたって小競り合いが続く次第。

 

 要は朝鮮半島のようになるものの、ならば今回の戦争を契機とするエネルギーや食糧価格の高騰も、長期にわたって続くと見なければなりません。

 これらの価格高騰が、物価全体の上昇をもたらし、わが国でも人々の生活を圧迫しているのはご存じのとおり。

 

 『平和主義は貧困への道』とは、私が2018年に出した本のタイトルですが、ウクライナ戦争について関心をなくすのも、経済の先行きについて目をつぶることにほかならず、やはり貧困への道なのです!

 というわけで、現実を直視してゆきましょう。

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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