スウェーデン方式はどうなったのか? 絶賛した論者の恥ずかしい姿【篁五郎】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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スウェーデン方式はどうなったのか? 絶賛した論者の恥ずかしい姿【篁五郎】

 さらに隣国のノルウェーとデンマークの国境を封鎖し、政府に飲食店や小売店、公共交通機関を閉鎖する権限を与える法律を施行。オリンピック、パラリンピックを開くために入国審査を甘くした日本とは対照的な行動を取ったのである。

 その理由はデルタ株の蔓延である。ストックホルムでは、検査を行ったサンプルの27%が変異株と確認されていて、感染者の急増だけでなく、公衆衛生の専門家が同国の医療システムが変異株に直面していると指摘していることが規制強化の理由にもなっていた。

 しかもロベーン首相は、2月24日に「さらに状況が悪化した場合、政府は一部地域でロックダウンを行う準備を整えているが、その措置が必要にならないことを願っている」と語り、日本でも一部で検討されているロックダウンについても言及するほど追い詰められた。

 しかしそうした規制強化をしたこととワクチン接種が進んだお陰でスウェーデンの新規感染者数はピーク時の9%にまで減っている。

 ロベーン首相は各種の規制緩和を6月1日から開始すると発表。飲食店の営業時間は午後8時30分から午後10時30分へ、酒類提供時間は午後8時から午後10時へ、それぞれ延長した。さらに8人に制限している集会人数の上限は、着席可能な場合は屋内で50人まで、屋外で500人までに引き上げ、屋外では着席できない場合も100人までに引き上げている。

 新型コロナワクチン接種もオックスフォード大学などが運営する「Our World in Data」によると、5月16日時点のスウェーデンの新型コロナワクチンの1回目接種率(人口比)は31.6%で、EU加盟27カ国平均(31.5%)とほぼ同じ数値で推移しており、現在は2回のワクチン接種が完了した国民が64.13%と高くなっている。

 こうした規制強化によって一時期の悲惨な状態から抜け出したスウェーデンだが、最初のスウェーデン方式を推奨した言論人は、規制強化したことについてだんまりを決め込んでいる。

 藤井聡京都大学大学准教授はTwitter

 

《「スウェーデン政府は集団免疫を目指して感染拡大を推奨したから人がバタバタと死んでしまい、しかも経済はボロボロで大失敗だ」というイメージを口にするメディア・言論人は多いですが実態はかなり違います》

 

 こう明言をし、自身がパーソナリティーを務めるラジオでも規制強化したことには触れず、感染者数が減ったことだけを伝えた。小林よしのり氏も「詳しすぎるスウェーデン情報:集団免疫は失敗ではありません」小林よしのりライジング Vol.384で、スウェーデンの死者数が急増したことに対して「「そりゃ、寒けりゃ熱出す人は増えるだろう」としか言いようのないデータは、世界中にいっぱいあって、なんだか呆れてしまう」と反論はするものの2020年のスウェーデン方式が失敗したのではないと断言。しかも9月27日に「NEWSポストセブン」で公開された、小林氏、東浩紀氏、三浦瑠麗氏の鼎談でこんなとんでもない発言をしている。

 

「スウェーデンは、国民の行動を縛る規制や、子供から教育機会を奪う休校は憲法違反だからしないといって、実は集団免疫を目指そうとしてきた。人口当たりの死者数で比較したら、ロックダウンなど厳しい規制をしたイタリアやイギリス、アメリカ、フランスなどより少ないんです」

次のページ「ゼロコロナ」とレッテル貼りして非難する藤井聡氏と木村盛世氏の了見

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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