職場が変わってもいつも「仕事が遅い」と言われるのが悩み。どうすれば早く仕事をすることができるの?【角田陽一郎×加藤昌治】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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職場が変わってもいつも「仕事が遅い」と言われるのが悩み。どうすれば早く仕事をすることができるの?【角田陽一郎×加藤昌治】

「お悩み"あんちょこ"相談会 」第2回

 

■「写経」のススメ

 

加藤:でもそれは、自分だけじゃ変えられないじゃない。自分にできることで、なんかすぐできそうなこと、1個ぐらいない?

角田:どうかなあ……。

加藤:私が個人的にお薦めするのは「写経」です。

角田:またいきなりいくね。写経って、般若心経とか書くやつね。

加藤:そうそう。仕事だから、昨年度の資料とかが何かしら紙に残ってるじゃないですか。

 それをあまり深く考えずに、虚心坦懐に写す。

 そうすると、特に行政とかにはいい意味で型があるから、それが分かってくると思うんですよね。

角田:あー、武道とかもそうだもんね。型があると反射神経でやっちゃうもんね。

加藤:仮に3年分写経したとすると、多分「3年間変わっていないところ」と「3年で変わったところ」が見えてくるから、「じゃあ、ここは変えてもいいんだな」ないしは「変えた方がいいんだな」みたいなことや、「1年でこれくらい変わるんだな」という流れが分かる。

 要は、歴史が分かると。次の打ち手が見えてくる。自分がその型に「浸かる」感じがあると楽になったりすると思うんです。(編者注:『仕事人生あんちょこ辞典』「盗む」の項目もご参照ください)

 過去のものをそれだけ写経した事のある人は、多分ほとんどいないから、それだけで上司からは「あなた、よく知ってんねえ〜」ってなるでしょ。

角田:ああー、1個プラスアルファができるってことね。ちなみにそれは別に「写経」じゃなくても、今みたいな心境になれることだったらいいわけ?

加藤:いや、そういうことじゃないな。

角田:やっぱり写経がいいんだ。

加藤:あえて「写経」と云ってるのは、写真に撮るのはあんまり意味がないと思っててさ。やっぱり自分で一回手を動かしたり、身体を使ってやってみる。

角田:そりゃそうだよね。なるほど。

加藤:それを続けて、自分の身体に入れることができるようになると、何か困ったときにそこから引っ張ってくることができるようになるので、仕事は相当楽になるぞと。

 特に行政の場合は「継続性」が大事なところがあるわけですが、それって要は「引用」じゃないですか。その時に自分の中に、引用できることと、引用しなくてもいいことの基準ができている。企画書とか報告書とか、役所って相当文書化されているので、それがやりやすいと思うんです。

角田:まとめると、新しいところに異動したら、異動したところの過去の文書を写経する、と。なるほどね。

 

■自分を捨てて、「あらすじ」になってみる

 

角田:『仕事人生あんちょこ辞典』に、スタジオジブリの鈴木敏夫さんが「映画の感想を感想文で書くな」「あらすじだけ俺に説明して」って仰ってるエピソードが何度か出てくるでしょう。

 「あらすじを説明するだけで、もうその人の感想になっているから」という話を聞いたんだけど、今の加藤君の提案って、それとちょっと似てるところがあるのかな。

 「感想を書け」なんて言うから、「オリジナルなものじゃなきゃといけない」とか「独創的な考えがなきゃいけない」とか思ってしまって、それが無いから「いや、自分は感想文は書けません」って言うわけだよね。

 あらすじだけ説明すればいいなら、作文は型でできるじゃない。でも、その型の中で、自分がどうやって、例えば俳優さんの顔に着眼を置いたか、ストーリーの奇抜さに着眼を置いたか、カットの割り方に着眼を置いたかで、あらすじの説明の仕方が変わってくるわけだよね。

加藤:仕事の報告書も、実は「あらすじ」と呼べる面もあるよね。それに加えて、過去の資料を読みながら、○○さんに説明する、というあらすじもあるね。

角田:知らない人に説明するわけだね。

加藤2回目は、同じ資料・元ネタで、別の■■さんに説明する。その元ネタを仮に「A」とすると、A´、A´´、A´´´……みたいに、相手によってあらすじを変えてみることで、報告書の説明の練習になる。

角田:それをすることで、多分、新部署への適応力が増すよね。

加藤:これはいいかもしれないな。

角田:加藤君の薦める「写経」によって型を飲み込んだ上で、「自分らしさ」をどうやってその環境に順応させるか、みたいなところにいくといいのかな、と思ってこの話をしたんだ。

加藤:それと、相談者の方へのアドバイスとしては、ある意味自分を捨てる、自分の個性とかを一回置いて、その「あらすじ」になってみるのがいいかも。感想文だと自分が入ってきちゃうから。

角田:「淡々と」ってことだね。それ、結構大事な気がする。

 「自分色に染まらないとちょっと不満」みたいなことって、いろいろあるじゃないですか。それはそうなんだけど、一方で「自分を向こう側に染めてみる」みたいなのも意外に気持ちいいなって思えると、もしかしたら、この相談者の方も考え方がガラッと変わる可能性があるよね。

 「むしろ新しい部署行ってみたい」「今度は何色に自分が染まるんだろう」みたいな。そうなると、仕事が楽しくなるような気がします。

 

加藤:今かとうが「写経」と云ったり、角田君が「あらすじ」と云ったことって、昔の学校の勉強でいうと「予習」に近いんです。自分は中学2年生の時に初めて、いわゆる塾に行ったんですけど、その時、塾って進行が早いじゃないですか。

角田:はいはい、どんどん進むよね。

加藤:学校より早いから、学校の勉強を全然しなくてよくなっちゃって、「こりゃあ素晴らしい」と思ったんですよ。

 この質問者の方で云うと、慣れるのに1年半ぐらい時間がかかると仰ったのが「学校での1年半」みたいなイメージだとすると、「予習」によってそれが短くなるんじゃないかと。

 その時に、塾なら先生が教えてくれるけど、仕事なら「写経」をしたり、人にあらすじを説明する、という予習の仕方になるんでないかと。過去の資料を使うから一見「復習」に見えるけど、でも自分にとっては新しいことなんだから「予習」ですよね。そういう予習の仕方をしてみるだけで……1年半が3日にはならないと思うけれど。

角田3ヶ月ぐらいになるかもしれないね。

加藤:というわけですが、いかがでしょうか?

 

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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