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日本一の誉れ高い観光列車「雪月花」に乗る

半年先まで予約いっぱい!人気のヒミツは

鮮やかでスタイリッシュな雪月花。妙高高原駅

 北陸新幹線金沢延伸開業でJRより分離された旧信越本線(妙高高原~直江津)と旧北陸本線(市振~直江津)を引き継いで運行している第3セクターえちごトキめき鉄道において、2016年4月にデビューした観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」が大好評だ。川西康之氏がデザインした車両は、グッドデザイン賞をはじめ世界的なデザイン賞の数々、優れた鉄道車両に贈られるローレル賞などを受賞したほか、日経新聞やテレビ番組などのいくつかの「観光列車ランキング」でも第1位となるなど名実ともに日本一の誉れ高い観光列車だ。
 したがって、乗りたいと思っても、ほぼ半年先まで満席続きで、半ば乗車を諦めていた。ところが、今般のコロナウイルス汚染の影響で「雪月花」も大量のキャンセルが出たようで、間際になってえちごトキめき鉄道から乗車のお誘いがあった。それも嬉しいことに最上級の展望ハイデッキ席。2名以上の利用が前提なので妻を同伴して乗りに出かけた。

 乗車日は、高輪ゲートウェイ駅、サフィール踊り子号、近鉄特急新型車両ひのとりなどの開業イベントもあったけれど、これらは今後いつでも取材できると思うので、すべて無視して「雪月花」の始発駅上越妙高に向かった。ちなみに、「雪月花」は4月以降もほぼ予約で埋まっている。なお、えちごトキめき鉄道では、「雪月花」のことは観光列車ではなく、リゾート列車と呼んでいるので、今後はリゾート列車と記載したい。
 北陸新幹線との乗換駅上越妙高駅のホームで待っていると、発車の6分前に直江津方面からリゾート列車「雪月花」が回送されてきた。鮮やかな銀朱色に塗られ、丸みを帯びてどこかヨーロッパ風の車両がホームに横付けとなると、これから始まる旅に期待が高まる。まずはサイドをじっくりと眺め、妻と記念写真に収まり、車内へ入る。

さくらラウンジ

 「雪月花」は2両編成。指定された座席は後方の2号車にある。車内で、まず目に留まるのは天然の木を不燃加工した壁で、ここは「さくらラウンジ」と呼ばれるカウンターだ。お酒やグッズが置いてあり、それらにどうしても目が行く。そこを通り抜けるとガラス・ドアがあり、その中が客室だ。通路を挟んでテーブル席が両側に3つづつ配置され、その先にあるステップを上がると展望ハイデッキとなっている。真ん中の大きなテーブルをはさんで4人掛けになっているものの相席にはならないので、この日は夫婦二人の貸し切りである。窓を背に座ることになるけれど、椅子は自由に向きを変えられるので、運転台かぶりつきの展望席にもなる。入口はロープで遮られているので、係員以外の乗客が入ってくることはなく、プライベートなエリアだ。ほかのテーブル席よりも一段高くなっていることもあり、優越感に浸ることができ、実に心地よい。

展望ハイデッキ 提供:えちごトキめき鉄道

 列車は静かに動き出した。ホームでは駅長さんと係の女性が手を振って見送ってくれる。いよいよ3時間ほどの旅の始まりである。列車の行先は糸魚川になっているけれど、まずは糸魚川とは反対方向、つまり南に向かって進む。展望席は最後尾となって車窓は遠ざかる線路を眺めることになる。サイドを見ると遠くには妙高山を中心とした山並みが見えるはずだが、雲に隠れて良く見えない。しばらくは平坦なところを走るので、先頭の1号車を見学する。何と乗客が一人しかいないし、後ろの方の席に座っていたので、車内の写真を撮っても邪魔になることはない。この車両は、すべて妙高山の方向を向いた席で、2人連れの場合は並んで座ることになる。天井まで大きな窓が広がっているので明るく開放的だ。運転台の後ろはハイデッキだが、こちらは誰でも利用できるフリースペース。背もたれのある一人用の席と面白い形の板張りの席があって前面展望が楽しめる。

1号車車内

1号車のハイデッキはフリースペース

 上越妙高駅を出て15分ほどで山深くなり二本木駅へ。駅のはずれで停車すると、バックしてホームにゆっくりと移動する。いわゆるスイッチバックの駅だ。21分停車なので、車掌さんがガイドとなってホームや古い駅舎を案内してくれる。発車時間まで余裕があったので、妻は地元の人がホームで特別に開いていた売店でお買い物。名産のほおずきジャムなどを買っていた。

二本木駅ではスイッチバックを体験

午前便の食事はフレンチ

 列車は、さらに南下する。ここで、食事が運ばれてくる。午前便は、新潟県十日町出身で東京・六本木にあるミシュラン二つ星レストランのオーナーシェフ飯塚隆太氏監修のフレンチ。3つの木の箱にきれいに盛り付けされていた。まずは、スパークリングワインで乾杯!その間に列車は、関山駅を通過し、白田切川橋梁に差し掛かると最徐行しはじめた。進行方向左手を眺めると、川がオメガの文字を逆さまに描いたように曲がり、その間にある台地は棚田になっている。なかなかの絶景だ。

棚田の車窓。最徐行で通過

 えちごトキめき鉄道最南端の駅妙高高原で14分停車。標高の高いところにあるためか小雪が舞っていた。車掌さんが、傘を用意して駅前の土産物屋に案内してくれる。線路はさらに延びているけれど、そちらはしなの鉄道の線路だ。「雪月花」は、この駅で進行方向を変えて、来た道を戻る。ここからは展望ハイデッキ席が先頭になる。
 しばらくは同じ景色を見ることになるので、ちらちらと前面展望を楽しみつつも食事に専念する。温かいスープも運ばれてきた。関山駅と二本木駅の間では、アテンダントさんが「本当ならこのような絶景が眺められるのですが、本日はあいにくの天気で残念です」と大きな妙高山のパネル写真を見せてくれた。テーブルのランプは妙高山の形をイメージしているとも教えてくれる。見えないと思うと悔しい。

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野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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