いまだ悲しみの声が絶えない、野村克也氏の突然の訃報。死因は急逝した沙知代夫人と同じ「虚血性心不全」であった。心臓血管研究所・所長の山下武志氏によると、「突然死」のイメージの強い心臓病が、実は「慢性病」であると前回の記事でお伝えした。さらに、心臓病は予防・改善・治療もしやすいのだという。日本一わかりやすく基礎知識を解説したという氏の著書『心臓・血管の病気にならない本』(KKベストセラーズ・2/27刊)から引き続き見ていこう。

■心臓・血管の3つの「やすい」

心血管疾患はがんと並ぶ日本人の二大死因です。日本人の2人に1人以上はこれらの病気で命を落とします。ですが、心臓・血管の病気はがんと比べると

・予防しやすい
・改善しやすい
・治療しやすい

という3つの特徴があります。

 

予防しやすいのは、ダイエットや運動など、生活習慣を少し改めるだけで心血管疾患に繋がる慢性炎症を改善できるためです。その気になれば、1、2カ月でもはっきりとした改善が見られるでしょう。

心血管疾患に繋がる慢性炎症をお持ちの方でも慢性炎症を改善しやすいのは、心血管の状態は、ご自分で簡単にモニター(観察)できるからです。
がんのモニターはとても大変です。全身の状態をチェックするためには、レントゲン、CT、MRI、内視鏡……などと膨大な検査が必要になります。経験された方も多いでしょうが、時間的にも肉体的にも、金銭的にも大変な負担がかかります。

しかし、心血管の状態は、血圧と脈拍を見るだけですぐにわかります。血圧と脈拍を測る血圧計は病院の待合室などに置いてありますが、ご家庭用にも安く買えますし、計測も簡単。あっという間に終わります。

心血管疾患につながる慢性炎症が改善すると、血圧が下がり、脈拍も遅くなります。逆に慢性炎症が悪化すると、血圧は上がり、脈拍は早くなります。ですから、血圧と脈拍を定期的にモニターしていれば、心臓と血管の状態はよくわかります。

ですが、それでも心血管疾患になってしまう方はいます。しかし近年、治療法は急速に発展し、よい治療法やよい薬がたくさん登場しています。付け加えると、医療が進歩した現代では、心血管疾患=突然死というイメージももはや正しくありません。

予防しやすく、改善しやすく、もし病気になっても治療しやすい。そんな心血管疾患で亡くなるのは、とても惜しいことだと思いませんか。

■脈拍と血圧は心臓・血管の重要なサイン

あなたの心臓や血管が健康かどうかを判断するために役立つのが脈拍と血圧です。心臓も血管も、置かれた状況に応じてさまざまに変化します。その変化によって、人は健康にも、不健康にもなります。

たとえば、走ると胸がドキドキしますよね。
それは、走ることで負担がかかる筋肉が通常よりもたくさんの血液(酸素)を必要とするためです。心臓は、筋肉からの需要に応じていつもよりも早いペースで血液を送り出すためにポンプ機能をペースアップするのです。

1分間当たりのドキドキの回数を脈拍といいますが、お酒を飲んでも脈拍は上がります。これも、アルコールを分解するために、肝臓が多めに血流を必要とするからです。このように、心臓は常に体からの需要に応え、脈拍を変えることで血液の量を調整しています。

したがって、脈拍は体からの重要なサインなのです。脈拍が変化するということは、体に何らかの変化が生じ、心臓の仕事のペースが変わったということを意味しています。

ですから、常日頃から脈拍をチェックしておくことは、心臓の健康状態を知る上では必須といえます。脈拍は、心臓と血管の重要なサインです。

 

しかし、心臓と血管のサインは脈拍だけではありません。血圧も同様です。
健康診断では、必ず血圧を測ります。健康診断に限らず、体調不良で病院に行くと、多くの場合は血圧を測定されるでしょう。医者が血圧を重視するのは、血圧が体の状態の重要な指標になるためです。

血圧とは、読んで字のごとく血液の圧力です。心臓が「ドクン」と収縮して血を全身に向かって押し出す瞬間の血液の圧力がいわゆる「上の血圧」(収縮期血圧)で、収縮した心臓が元に戻った後の血圧が、いわゆる「下の血圧」(拡張期血圧)です。

血圧は、身体の状態を敏感に反映します。たとえば、痛みを感じたり、出血したりすると血圧が下がる場合があります。進化の過程で、血圧を下げることで出血を抑えるシステムが人体に備わったのかもしれません。

また、脈拍の解説で「走ると脈拍が上がる」と書きましたが、同時に血圧も上がります。興奮すると活性化する「交感神経系」が優位になり、全身の血管を収縮させるからです(お年寄りなどが激しい運動を控えるように言われるのは、血圧が上がると血管が脆い場所から出血する恐れがあるからです)。他にも、血圧はアルコールや脱水などの影響によっても変化します。

 

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