【超高齢社会の日本こそ医療・介護先進国として世界のリーダーになれる【介護・医療の超成長戦略】】 | BEST TiMESコラム

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超高齢社会の日本こそ医療・介護先進国として世界のリーダーになれる【介護・医療の超成長戦略】

高齢化するアジア各国にも応用できるクラウドサービスの未来(2)

 喫緊の課題である超高齢社会における医療・介護問題。国民の生命と健康を守る医療、介護、子育ての現場でICT(情報通信技術)を駆使し、地域包括ケアクラウドサービスの充実を劇的に推進する企業がある。東証一部企業の株式会社カナミックネットワークだ。同社の代表取締役社長の山本拓真氏に、高齢化の逆境がチャンスだとする理由と医療・介護の知見と経験が社会福祉ビジネスを日本の新たな基幹産業にできる可能性について聞いてみた。

◆官と民で連携しながら医療・介護の現場を円滑に変える

———前回のインタビューでは、「ICTを活用した医療・介護サービスを開発し、海外への輸出を目指す」とおっしゃいましたが、その具体的な方策は何でしょうか?

山本拓真氏(以下、敬称略「山本」と表記) 「弊社では東京都のポータルサイト(東京都職種連携ポータルサイト)にて、都民の生活を支える医療介護連携システムを導入すべく、現在開発中です。これは東京都の入札で弊社が採択されたもので、本年4月以降から稼働する予定です(【図表1】参照)。

このシステムの特長は、病院・診療所・介護事業者のネットワーク化といえばいいでしょうか。
 例えば、在宅ケアに関わる医療・介護連携におけるICTサービスは都内で様々なシステムが乱立している状況ですが、地域ごとに縦割りな様々なシステムを、横串で統合的に利用できるのが本ポータルサイトの特徴です。これによりシステムを問わず地域を跨いだ医療・介護連携を円滑に行うことができます。また、救急病院に患者が搬送され手術を受けた後、地元の病院に転院することになったとしましょう。患者には、転院先を探すのに苦労する方もいらっしゃる半面、もっと多くの患者の受け入れも可能という病院もあります。その受け入れ先を検索できる、需要と供給をマッチングする「転院のマッチングシステム」が実装されます(【図表2】参照)。

 この転院マッチングシステムは、4月からはまだ、医療従事者のみが利用できるポータルサイトですが、行く行くは介護従事者まで使えるよう拡大したいという構想もあると聞いております。そうすれば、介護従事者同士で連携することが可能となり、要介護者とその家族が急に転居することになっても、スムースに引き継ぎが行えるようになります。そして肝心なのは、これを東京都が施行するという点。モデルケースとしてグローバル都市・東京が施行すれば、日本全国、いや世界中に広がることは決して不可能ではありません

———介護現場の外国人実習生にも、御社のシステムが役立っていると聞きました。

山本  「昨年11月1日、『外国人の技能実習の適正な実施及び保護に関する法律』が施行され、介護の現場に海外から技能実習生が続々と来日しています。
 すでに実習生たちは、PC・タブレットなどで弊社のシステムを使用しています。海外実習生たちにとって最も問題なのは、言葉の壁です。日本語を“話し”てコミュニケーションをとることまではできても、書類(介護記録など)を作成するまでは難しい。その点、弊社のシステムは独自の介護記録翻訳ツールやAIを導入していますので、実習生の書類作成をサポートできます。
 これによって、実習生たちが書類を手書きし、それを介護サービス事務所の上司が読解し、チェックし修正するという手間が劇的に削減できています。
 私は、こうした実習生たちが日本で学んだ後に帰国し、日本の充実した介護サービスを自国に広めてほしいと願っています。それこそが『日本式の「ICT・AI・介護サービスの輸出』であり、日本が介護先進国として世界中に賞賛される契機になるはずです」

———PCやスマホで書類を作成できれば、若い人が介護職に流入してくることも促進できそうですね。

山本  「その通りです。若年層には、手書きで書類を作成することのほうが、むしろ難しいのです。介護記録はスマホでできます』と求人情報に掲載したところ、若い方の雇用が増えたという事例もありました。
 これまで介護の現場では、この煩雑な書類作成事務等が仕事の2〜3割を占めていて、仕事の生産性向上など、とても見込める環境ではなかったのです。そうした事務仕事がICT等を活用して削減できるだけで、一人の介護従事者がさらに多くの複数の要介護者を担当できる時間を捻出でき、これまで低いといわれていた介護従事者の給与のアップにも、つながるのではないでしょうか。

———医療介護、そしてヘルスケアのジャンルが持つポテンシャルは、非常に高いということですね。

◆日本の知見と経験で世界の高齢社会をリードする

山本  2025年には、介護の市場規模は16.5兆になると予測され、医療約50兆と子ども・子育て10.8兆、その他8.4兆を合わせると約85.7兆円と見込まれています(内閣府「2040年を見据えた社会保障の将来について」より)。これは自動車産業の市場規模を上回ります。つまり、日本国内の医療・介護の市場だけで、グローバルな自動車産業と同じくらいの需要を持つことを意味します。さらに2040年には、医療・介護市場だけで100兆円まで成長すると見込まれている(従前資料)のです。
 それだけ巨大な市場規模を持つ分野を、税金を投入し、社会保障の“費用”を使う分野と見るか、成長産業への“投資”と見るか———私は、世界に輸出できるだけの重要な成長産業と考えています。
 もはや、製造業の輸出だけによって外貨を稼ぐ時代ではないでしょう。モノではなく、ソフトやサービスを輸出する時代であり、世界が日本から欲しているのも知見・経験なのです。
 医療介護サービスは、十二分に投資に値する分野です。知見とノウハウを輸出し、世界の高齢社会をリードし支えていくのは、世界最先端の超高齢社会国家、日本の義務といっていいのです。

———日本の医療介護は先行きが不透明で、このままでは「1億総介護時代になる」と暗いニュースもささやかれていました。

山本 「『1億総活躍時代』を揶揄して、一部でそのようにいわれていますね。社会保障制度は利用するだけ、医療・介護は税金による“費用”と考えてしまったら、確かに『1億総介護時代に陥りかねません。増える一方の高齢者人口を、下の世代が税金を納めて、支えていかなくてはならないのですから。
 そこを、ビジネスチャンスととらえ、発展させればいいのではないでしょうか。今が、そのチャンスなのです。
 弊社が目指すべきは、医療・介護・子育てを支援するためのビジネスとして発展させ、生産性を高め、雇用を生む好循環(=私たちの経験)を今後、アジア諸国が直面する「高齢問題」解決ソフトとして輸出していくことです。
 弊社の理念でもある「人生を抱きしめるクラウド」とは、子育てから介護まで、それこそ「ゆりかごから墓場まで」を目指したイギリスの社会福祉政策を踏まえ、それを市場を通して産業として実現することが目標ともなります。
 今はまだその端緒ですが、一つひとつハードルを超え、育てていきたいと考えています」

 

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