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アニメ「かげきしょうじょ‼」が描いた理想と、ミイヒらが示す現実。『痩せ姫』刊行5周年に思うこと【宝泉薫】

NiziU(ニジュー)のミイヒの激痩せと休業、復帰が話題に

 

 実際、芸能界では昨年、アイドルグループ・NiziUのミイヒの激痩せが注目された。体調不良による2ヶ月の活動休止を経て、年末の音楽番組で復帰。一時期よりはふっくらした姿に、安心したファンも多かったが、今年の夏には「また痩せたのでは」という声が飛び交った。

 と同時に、それを羨ましがる声も。激痩せのあと、激太りをきたすことが珍しくないため、そうなるよりはマシとか、標準よりも細めを維持できるのは幸せといった感情を抱く人もけっこういるわけだ。

 それこそ、ガリガリがときに褒め言葉にもなるのに対し、デブはまずそうはならない。そこで思い出されるのが、モーニング娘。時代の安倍なつみだ。

 初期モー娘。のエースだった彼女は「激痩せ」と「激太り」でも注目された。2003年のエッセイ本「ALBUM―1998‐2003」で当時のことを振り返っている。痩せたきっかけは見栄えを気にしてのダイエットだったが、痩せすぎを指摘されても「自分でちゃんと客観視できてないから、ん? 痩せたぁ? って思ってただけなんだけどね」という。

 それに比べ「激太り」期の回想は深刻だ。「寝る前に食べちゃうの。して疲れてるから、そのまま寝ちゃうの。その繰り返し」という状態だったため、

「衣裳とかもきつくなったりして、雑誌でバッシングされたりして。うわぁっとか、どんどん自信なくなっていくんだけど、もう自分でつくったバリアが最高潮に張りつめられちゃってて、どうにもなんないの。(略)ココロではね。仕事がんばろうって思おうとしてるんだけど、モチベーションがもうどっか曖昧になってて。忙しいと忙しいだけ、なんかやらされてる感みたいな、被害妄想も強くなってくるのね」

 この時期、彼女は新加入の後藤真希と比較されたり、同じ番組から世に出た鈴木あみと対決企画をやらされたりして、多大なストレスや重圧に見舞われていた。もともとの資質に加え、そういう状況が心身のバランスをさらに不安定にしたのだろう。

 とはいえ、現在40歳で妻となり母となった彼女はけっこう安定しているように思える。つまり、激瘦せや激太りをめぐる葛藤は1、2年で解決したのかもしれない。ミイヒにしても、まだ1、2年のことだから、一過性の葛藤で済む可能性もあるわけだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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  • エフ=宝泉薫
  • 2016.08.26