「女性の生き方」エッセイでベストセラー街道ばく進中の『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』(KKベストセラーズ)。著者の藤森かよこ氏(福山市立大学名誉教授)は元祖リバータリアンであるアイン・ランド研究の日本の第一人者として知られている。そんな藤森氏が、いま日本で大きな社会問題となっている「不登校児」や「引きこもり」の原因とその未来について考察した。2019年3月に内閣府が発表したところによれば、40歳から64歳の中高年の引きこもりの人数は推計61万人。15歳から39歳の引きこもりの人数である推計54万1千人を足せばなんと115万人以上にのぼる。その実態はいったい何を意味しているのか?

アメリカの1960年代から増えてきた愛着障害児と回避型人間

 精神科医の岡田尊司(おかだ・たかし)は、『ネオサピエンス 回避型人類の登場』(文藝春秋、2019)において、未来は、他人と親密な人間関係を避けて自分の関心や興味に閉じこもる「回避型人類」の時代かもしれないと述べている。

 岡田によると、現代という文明環境は養育者に対する安定した愛着が形成されないまま育つ子どもを激増させてきた。ただし、この「愛着障害者」の中でも、親密な人間関係を持ちたがらない回避型人間はサバイバルに有利かもしれない。それは、どういうことか?

 アメリカでは1960年代から子ども虐待が社会問題になり、多動児や情緒障害児が増えてきた。最近の日本の現象は、アメリカではすでに1960年代から始まっていたのだ。

 同時に、親を含めた他人に関心を示さずに、他人との親密な関係から逃げ、自分の興味の世界に閉じこもる「回避型」の子どもが増えてきた。

 子どもが回避型になるには理由がいくつかある。まず、養育者(親である場合が多い)の子どもに対するネグレクトや無視などの一種の虐待から自分の心を守るために回避型になるケース。

 虐待ではなくても、何らかの理由で養育者の子どもへの応答能力や共感力が貧しい場合にも、子どもは回避型になる。養育者の対応がトンチンカンだと、最初から養育者に期待しないほうが、寂しさや怒りなどのストレスがかからないから。

 あと、生後一年未満に、もしくは長時間、保育所に預けられると回避型になることが調査によって明らかになった。同じ著者による『死に至る病 あなたを蝕む愛着障害の脅威』(光文社、2019)は、現代の病院で通例であるような、新生児を誕生直後から母親から離して新生児室で管理する方法には問題があると指摘している。

 なぜならば、誕生後すぐに母親から離されると、安定した愛情関係を司るホルモンであるオキシトシンを新生児が分泌できないからだ。最初が肝心なのである。

 

愛着障害児は成人後も人間関係で失敗する

 ただし、共働きや離婚の増加による養育者の精神的時間的体力的余裕のなさのためや、新生児保育方法の不備のために、安定した愛着関係を持てなかった子どもがみな回避型になるわけではない。

 愛着障害の子どもの中には、寂しさからやたら他人に接近し要求し、厚かましく図々しく見える子どももいる。子どもの人見知りというのは、信頼できるかどうかわからない知らない人間には近づかないということなのだから、正常で健康な反応だ。

 また、愛着障害の子どもの中には、特定の他人に過度に親しげにふるまうかと思えば、急に冷たく突き放す態度を見せることもある。常に相手の顔色を見て媚びる子どももいる。

 どちらにしても、養育者に信頼が持てず、心の奥に安定した愛情が育まれなかった愛着障害児は、成人後も、他人と適切で安定した関係を結ぶことが下手である。

「恋多き女」とか「女性遍歴の多い男性」というのは、つまり「人間関係の出入りが多い人」というのは愛着障害者である。根本的には寂しい人々である。