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疲弊する教員の「無関心」と、それを利用する者たち

【第6回】学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■「給特法」は教師のプライドなのか?

「気にしていませんでした。職場でも話題になっていません」

 2019年12月4日、給特法の改正教職員給与特別措置法が参議院本会議で可決され成立した。その日、ある中学校教員に「国会での審議を気にしていたか?」と聞いた際に戻ってきたのが先の答えだ。

 萩生田光一文部科学大臣は本年9月24日の定例記者会見で「教員のプライドでもある給特法」と語っている。給特法によって教員の給与には、一般公務員にはない給与月額の4%が教職調整額として上乗せされている。それが一般公務員との「違い」であり「プライド」だと言っているらしい。
 しかし、その「プライド」によって教員は「定額働かせ放題」を強制されている。過労死ラインを超えるような現在の残業に対する手当は、とても給与月額の4%でカバーできものではない。それが、プライドにつながっているのだろうか。

 いや、そもそも給特法が成立した当時から、教員は給特法をプライドとして受け入れていたのだろうか
 

■日教組の対応はどうだったのか?

 『給特法』成立前後の日本教職員組合(日教組)の動きについては、『教職研究 第10号』(2019年1月)に掲載された論文「日教組と給特法の成立過程」(以下、「論文」)が詳しい。執筆者は荒井英治郎(信州大学)、丸山和昭(名古屋大学)、田中真秀(川崎医療福祉大学)の3氏である。

 論文によれば、1968年3月4〜5日に開かれた日教組第76回中央委員会で、小川仁一副委員長から教育公務員特例法について「労働基準法の超過勤務にかかわる部分を適用除外し、教師に24時間勤務を押しつけ、代わりに教職特別手当法案によって、給与の4%程度の手当を出してごまかそうとしている」との発言があった。そのうえで、「教師に無定量勤務を押しつけることに対して力で対決する必要がある」と述べたという。

 日教組の超過勤務手当をめぐる裁判闘争(超勤闘争)に弱りはてた文部省は教員に残業代を出すための予算要求をした。これに反発した自民党文教部会は、1968年1月に教育公務員特例法の一部改正案をつくる。
 本俸を上げるが、労働基準法から教員を適用除外にする案だった。しかし、さすがに完全な適用除外には文部省も踏み切れず、2月に文部省と文教部会との妥協案として、4%の教職調整額の支給と労基法の超過勤務についての条項は適用除外とする教育公務員特例法改正案がまとまる。これが現在の給特法の原形といえる。

 それに反対したのが先の小川副委員長の発言だ。
 同じ第76回中央委員会で宮之原貞光委員長も、「教師の労働者性を否定し、わずか月2千円で、私どもに無定量労働を強要するという、近代国家においてはおよそ通用しない、時代逆行の悪法であります」と述べたと「論文」は記している。

 この時点で「定額働かせ放題」を日教組としては予測していたわけで、それに対して強く抵抗する姿勢だったことがわかる。そして、教育公務員特例法の「改悪」だとする姿勢を鮮明にしていく。

 ただし、教育公務員特例法改正案は国会に提出されるが、審議未了で廃案となる。そして1970年1月に文部政務次官に就任した西岡武夫が、超勤闘争の行方に危機感をつのらせた結果「4%を支給して労基法の超勤事項は適用除外とするが、超勤については文部大臣と人事院が協議して定めた場合だけとする」給特法をまとめて国会に提出、翌71年5月24日に成立する。
 その間に、日教組は自民党や文部省とやりとりを繰り返しているが、「無定量勤務の強要」に対する警戒を解いてはいない。
 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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