【あることに気が付かなければ『水曜どうでしょう』はなかった!?<br />~名物カメラマンが「ひとり」に向き合った出来事~】 | BEST TiMESコラム

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あることに気が付かなければ『水曜どうでしょう』はなかった!?
~名物カメラマンが「ひとり」に向き合った出来事~

今自分が見ている視点から離れてみる

 レギュラー放送が終了した後も、幅広い世代の人から支持されている番組『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)。出演する俳優陣と同じように人気を誇っていたのが、カメラを担当していた嬉野雅道さんです。
 嬉野さんは10代の後半から20代前半にかけて、鬱屈した気持ちで日々を送っていたといいます。自身の経験があるからこそ、「子どもたちに『こんな風にすればいいよ』とはアドバイスできない」と話します。様々な思いを巡らせながら、あらためて「いじめ」について語ってもらいました。(『生きづらさを抱えるきみへ』withnews編集部/KKベストセラーズ より

■嬉野さんが「ひとり」に向き合ったのには、ある出来事から

<嬉野さんが「ひとり」に向き合ったのには、ある出来事がありました。18歳のある日、行きつけの床屋で「間違いない、この頭はハゲる」と言われ、ひどくショックを受けそうです。翌日の朝、髪の毛が散乱した枕を見て、やっぱり自分はハゲるのだと信じ込んでしまったといいます。それから7年半もの間、引きこもりのような状態だったと話します>

 18歳なのにハゲるっていうのが、僕にはどうしても受け入れられなかったですね。その一番の理由は「これまでの自分ではない自分」という見てくれで再出発しなければならないことに対する恐怖だったんでしょうね。

 そのうちだんだん誰にも会いたくなくなって、そこから引きこもりみたいになってしまったんですけど。でも、そもそも悩みの原因がイジメとか深刻なことじゃなくて、ハゲですからねぇ。ハゲを苦にして死ぬのもねぇ、そうなったらそうなったで世間に笑れそうに思えてねぇ、こりゃ死ぬわけにもいかない。暗い青春でしたね。

 当時、『生命潮流』(工作舎)という分厚い自然科学系の本がはやっていました。興味本位で読み始めたら、これが思いがけず面白かったんです。この本を読んで、「この地球という星で生き残ろう、繁栄しようとする人類」という規模、「人類という視点」に想いをはせる動機をもらいました。

 そしたら「他人によく見られたい自分」という欲のかたまりから、いったん脱出するための道筋が見えた気がした。

 たとえば、サバンナを大群で爆走するバッファローの群れがいるとして。遥はるか上空から、その大群を見おろしているようなイメージです。乾季になると彼らは一丸となって、泉を目指して猛烈に走っているじゃないですか。それは生存をかけた大移動です。

 人間も個人個人で生きてるだけのようで、もう一方では、この群れのように生存をかけ、一丸となってどこかを目指しているんじゃないのか、そう思えてきたんです。

 だったら僕も生存をかけて走っている人類の一員なんじゃないのかとも、思えてきて。

 そんな群れの中の、一頭の個体までぐんぐん視点を降ろしてみる。すると「ハゲたくねぇなぁ」と思い悩んで走ってるバッファローが一頭いた、みたいなね。こいつが勝手に悩んで「ハゲはイヤだし、死のうかなぁ」とか思い悩んでいるわけです。泉に向けて爆走してるってことも忘れて(笑)。

 次にまた、その思い悩む個体から離れ、視点をぐんぐん上に戻していくと、バッファローたちの群れが、別の巨大な生き物のように見えてくる。そこまで視点を上げれば「思い悩む個体の想念」は、まったく見えなくなっている。

 わかりづらいね、ごめんなさいね(笑)。でも、そのとき気づくんです。僕という個体には、ひとかたまりの群れとして生存しようとする人類のワンピースとしての役割も同時に持たされているんだな、と。

 そして、そのことが確認できる視点まで急上昇していけば、思い悩む僕の想念はもうまったく見えなくなっている。それは当時の僕にとって、とても大きな気づき、発見でした。

 そんな地球規模とか、人類規模っていう単位で「ハゲる」っていう悩みに向き合ったら、なんだか、だんだん自分の悩みがバカバカしくなってきてね。

 そしたら思い悩むのもだんだん面倒になってきて、不意に、もう「ハゲでいいか」って思えちゃったんです。人類という大きな流れの中で自分を見おろしてみたら、ハゲの悩みも、それほど、たいしたことには思えなくなった。

 だって、ハゲてる以外、人類的には何の不都合もないんですからね(笑)。

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『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部

 

2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。

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