秋田県内を走るJR男鹿線で、SLイベント列車が走ることになった。10月初旬にその試運転が始まり、さっそくSNSでは、その模様を撮影した写真が多数公開された。とくに男鹿半島の付け根付近にあたる船越水道を渡る様子が目に留まり、それを見ていたら無性に出かけたくなった。幸い、蒸気機関車C61形が先頭に立つ列車は午後3時過ぎに現地を通過する。列車ダイヤを調べると、東京からでも十分日帰りで往復できることがわかった。幸い大幅な割引となるきっぷが調達できたので、日帰りで出かけることにした。本当は1泊したいところだったが、あいにく前後は予定で詰まっている。結果、SL撮影のみの弾丸旅行となった次第である。

秋田新幹線E6系。秋田駅にて

 久しぶりに乗った赤いE6系「こまち」は、新青森行きの「はやぶさ」と連結されて盛岡まで疾走する。ここで連結を解かれ、一足先に盛岡を発車。東北新幹線と分かれて、田沢湖線に乗り入れる。秋田新幹線と言っても地上を走り、単線で踏切もある。見方を変えれば、新幹線車両に乗っていながらローカル線の車窓を楽しめるのだから、何とも贅沢な気分だ。それまで最高時速320kmで走っていたのに、ぐんとスピードを落として最高時速は130km。しかし、鉄道旅なら、これくらいがちょうどいいと思ってしまう。進行方向右側の席だったので、盛岡からは、ほぼ西に向かう。したがって陽が直接当たらず、眩しさを感じることなく車窓を眺められるのがよい。実りの秋を迎え、黄金色に染まった田圃の中を走る。彼方には、岩手県の最高峰岩手山が姿を見せる。

車窓に現われる岩手山

 列車は雫石駅を通過するあたりから、次第に山深いところを走るようになる。赤渕駅を過ぎると、トンネルが連続する。山の中にある信号場で東京行き「こまち」とすれ違う。この区間で一番長く3915mある仙岩トンネルを抜けると秋田県に入る。生保内川の渓谷美に見とれているうちに田沢湖駅着。あと1カ月もすれば紅葉で美しい車窓を眺められるであろう。20年近く前にここで降り、バスで田沢湖畔へ向かったことを思い出した。

生保内川の渓谷美に見とれる

 田沢湖駅を発車すると、しばらくは広々と開けた田園地帯を快走する。このあたりは刈り入れが終わったようで、薄茶色で覆われた田畑が続く。ぽつんと秋田おばこ米の看板が目に入る。あきたこまちと共に、このあたりは日本を代表する米どころなのだ。

秋田おばこ米の看板

 遠くから非電化単線の線路が寄り添ってくる。第3セクター秋田内陸縦貫鉄道で、しばらく並走して角館駅に到着する。盛岡方面行きのホームのガラス壁越しに内陸線のカラフルなディーゼルカーが見えた。

角館駅で秋田内陸線の車両に遭遇

 桧木内川の支流玉川を渡り、広々とした田園地帯の中を南西方向に進む。角館から10分で大曲着。ここで進行方向を逆にして秋田へ向かう。本当は座席の向きを変えたいところだが、誰も変えないので我慢する。次が終点秋田なので問題ないとの判断であろうが、一駅とは言え30分以上かかるのである。秋田発東京行きの場合は、後ろ向きのまま発車するので、この区間は座席が逆向きであるのが慣例らしい。
 秋田駅までの区間は、僅かとは言え山越えもあり、意外に変化に富んだ車窓が楽しめる。もともとは複線電化区間だったが、奥羽本線と秋田新幹線用の線路を単線並列に変えている。一部の列車交換(すれ違い)ができる駅の前後は在来線用の線路を3線軌条にしているので、線路に注目したい区間だ。
 何だかんだ思っているうちに秋田駅到着。東京駅から3時間50分、盛岡駅からは1時間33分。田沢湖線の線路状態を勘案すると、よく頑張ってはいるとは思う。しかし、東京駅から新青森駅までが3時間を切る列車があることを考えると、新幹線と名乗るならもう少し時間短縮されてもいいなあと感じる所要時間である。

秋田駅から男鹿線の列車に乗車
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