■海兵隊誕生の背景

19世紀末頃のフランス海兵隊。向かって左のサーベルを持つのが士官、右のライフル銃を持つのが兵士である。

 その昔の銃砲がなかった時代、いくさ船(軍船)同士の戦いは、敵船に船べりを並べて乗り移り、剣や槍で戦うものだった。ゆえに最初のうちは乗組員の「船乗り(船員)」が片手間にこの「洋上の白兵戦」を戦ったが、やがて「剣術や槍の扱いに長けた白兵戦のプロ」を乗せて行き、彼らを乗り移らせて戦わせるようになった。

 もちろん「白兵戦のプロ」とはいっても、当時の船では、事が起きるまで「お客さん」にしておくような余裕はない。そこで彼らに最低限の「船上の仕事」をやらせるようにした。後年、その名残で、軍艦に乗り組んだ海兵隊の小部隊が、砲塔のひとつの運用を任されたり、艦の警備任務や乗組員の罰則取り締まりに従事したりするようになったのである。

 そしてこの「白兵戦のプロ」が、海兵隊の原点となった。

 やがて時代が進んで近代海軍となり、軍艦の乗組員がすべて海軍軍人となっても、軍艦に乗った「白兵戦要員」の需要は続いた。

 例えば、未知の土地の上陸探索に際しての先鋒や探検隊の護衛をしたり、植民地のような海外領土が得られた時代になると、今度はそういった外地の治安維持のための「海から上がってきた強力な警官隊」の役割を、海兵隊が担うようになったのだ。

 まだ飛行機がなかった頃、地上軍は船で運ばれて海から上陸するのが普通だったが、海兵隊はこれらの地上軍の尖兵として「沿岸部の足場(海岸堡)」を確保。主力を担う地上軍の到着と上陸をスムーズにするために最適だった。

 ただし、海兵隊を必要な人数だけ乗せられない小型の軍艦の場合は、少数の海兵隊員を中心にして、状況によっては艦の乗組員から志願者を集めて移乗班や上陸班を編成した。

 このように、当初は「洋上の白兵戦」を戦うための専門集団として集められ、それが時代のニーズに合わせて、自分らが乗り組む艦船の乗組員の役割の一部も担うようになったのが、海兵隊や海軍歩兵のルーツだったのである。