日本市場を狙ったK–POPの成功の理由には、徹底したマーケティングリサーチがあった。(『韓流アイドルの深い闇』著/金山 勲より

■売れる商品にするためのマーケティングリサーチ

 

 売れる輸出商品を作る場合には、通常ではまず輸出先の国民の文化や、言語、好みなどを、徹底的にマーケティングリサーチして、形や機能、色合いなどを決めていくものだろう。

 かつて、日本の家電製品が世界を席巻していた時代があった。アラブ諸国をターゲットに自動炊飯器の輸出プロジェクトを立ち上げた企業は、アラブ人が食べる米の種類はもちろん、ご飯にしたときの硬さなどを調査し、おこげご飯を好むということを知ったという。

 日本国内では、ご飯にツヤがあり、きれいに炊けることが条件だが、アラブではその逆だったのだ。

 メーカーは、おこげが炊けるように温度調整ができるICチップを開発して炊飯器に組み込み、アラブ人好みの見事なおこげご飯を自動で炊き上げる炊飯器を開発したのである。こうした努力で、相当な利益を得たのは当然だ。

 音楽あるいはエンターテイメントそのものを、輸出商品と考えるK–POP界では、日本での炊飯器開発と同じ方法が取られている。

 違いがあるとすれば、K–POPスターはICチップではなく、人間であるというところだ。

 まず、楽曲のコンセプトは、最初から自国以外のユーザーに向けられている。次いで、韓国語であるハングル語を知らない外国人に、ハングル語を知らなくても楽しめる音楽、つまり、グローバルスタンダードを意識した楽曲作りが必要だ。

 歌詞が分からないと伝わらないバラードでは、韓国人でなければメロディーだけしか心の中に残らないので、インパクトの弱いものになってしまうのだ。

 その点で、ダンス音楽なら歌詞が分からなくとも、メロディーと目立つダンスパフォーマンスによってミュージックビデオが注目され、認知度が上がっていくわけだ。

 したがって、輸出商品としてのK–POPの基礎となっているのは、歌詞とメロディーではなく、視覚と聴覚に訴えることにあるといえる。

 韓国色を完全になくして視覚と聴覚に訴え、海外各地の文化や生活に基づくニーズをつかみ、それぞれの国に合った商品を開発するという、緻密に練られた販売戦略に従っているのである。

 この中で最重要なことは、現地の言葉で歌うことだ。制作過程では、歌詞そのものは重要ではないが、現地の言葉をアーティストが口にすることで、より印象深くなるという効果を狙う戦略である。

 それも世界ナンバー1の市場であるアメリカを中心に使われている英語、ナンバー2の日本語、それにアジアでは最大人口の中国語に絞り込む。

 東南アジアには中国語を話す華僑が多く、経済力もあり、中国語は社会的影響力も強い言語である。人口12億人の中国本土は、今後に期待の持てる市場になる可能性が高い。つまり、英語と日本語、中国語をマスターしておけば、世界市場で商売ができる基本ソフトを商品に組み込むことができる。

 これらの条件を満たして成功した一つの例は、2000年に日本デビューを果たした、シンガーソングライターのBoAだろう。

 彼女は、あえて韓国人と言わず、Jポップ歌手として売り出したことが成功した。BoAのデビュー当時には、韓国人であることを知らないファンが多かったが、日本人離れしたパフォーマンス能力の高さで、日本人ファンの評価を得たのだ。

 徐々に、彼女が韓国人であることが知られるようになった時には、すでにBoAというブランドが確立されており、日本社会へ自然に受け入れられていた。

 彼女は特に日本語能力に優れ、日本語の歌詞を日本人以上にしっかり聞かせることができたのである。

 優れたパフォーマーには偏見なく受け入れることができる日本人の若い層に強固なBoAファンが増え、世代を超えた幅広い層にもファンが増加した。

 こうしてポップアーティストとして認知されたBoAは、ミリオンセラーを達成し、日本で大成功を収めた。

 輸出先を絞り込んだ商品開発と売り込み戦略は、BoAの成功で大きな成果を上げることができ、このパターンにしたがって、日本市場を狙ったK–POP商品が、次々と日本向けに開発されていく。

 だが、優れた素材として加工されていく韓国人スター候補たちには、過酷な試練でもあった。