私ども「与儀美容室」は、私の祖母である与儀八重子が昭和23年に銀座で創業し、その後、母である与儀みどりが継ぎました。この「与儀美容室」は、先日リニューアルした、日本を代表するホテル「オークラ東京」の中にあります。(『与儀美容室がお客さまから学んだ「美しい生き方」』著/与儀育子 より引用)

 私たちは美容のプロ、「美の職人」だと自負していますが、人間ですから失敗がまったくないわけではございません。

 うちの美容室のスタッフの多くがお叱りを受けたことがあるという、とあるお客さまがいらっしゃいます。お若い頃は海外を飛び回り、生き馬の目を抜くようなお仕事をされていたと伺っており、英語もペラペラで、まさに才媛といった方です。

 このお客さまがお越しになったとき、こんなことがありました。

 スタッフがシャンプーに入る時、「シャンプーをお手伝いさせていただきます」と申し上げました。スタッフは、決まり文句のつもりで言ったようなのですが、そのお客さまは、「あなたがシャンプーなさるんでしょ? 私がシャンプーをするわけじゃないわよね」と、至極当然なご指摘をされました。

 スタッフの物言いが気になっても、聞き流してしまう方もいらっしゃいます。そこをしっかり指摘して立ち居振る舞いや言葉づかいの細かいことまで、徹底的に教えてくださいます。もちろんヘアセットに関しても、ご自分の好みでなければしっかりご指摘くださいます。しっくりしないサービスを「そんなものか」と流して受け入れてしまうと、いつまで経っても好みが伝わらず、ずっと満足されないままです。

このお客さまのように細かく指摘していただくことで、お互いにとって良い緊張感が生まれ、こちらもより上質なサービスをさせていただくことができるのです。

本来は私たちが気づかなければいけないことまでご指摘いただくこともございますし、お客さまを煩わせてしまいますので、とても申し訳なく思うのですが、私たちを育てようというお気持ちが伝わりますので、本当にありがたく思っております。