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超人気アニメ「リゼロ」のスバルみたいな「脳内キング」はゲーム(異世界)だけが居場所だった……

絶望に抗う--発達障害とひきこもりの実例

みんなと同じ「フツー」のことができない、など「負の側面」ばかりに注目される発達障害。

でも、それは見方を変えれば、ある特定の才能が飛び抜けて「発達」しているとも言える現象であり、決して病気ではない。

『今ひきこもりの君へおくる踏み出す勇気』の著者、吉濱ツトム氏が「個人セッション」で出会ったひきこもりの実例をここに送る。

今回は、「オンラインゲーム」という異世界から戻って来れなくなった男性のお話。

ただ、その「異世界リア充」で人生を取り戻した超人気アニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』のスバルのように「ゲーム」では信じられないほど活躍する男性が、なぜ「実人生」というゲームでは失敗するのか……。

〝脳内キング〟が炸裂、承認欲求が強すぎてゲーム依存症に

(男性35歳/ひきこもり歴10年)

 Fさんは誰もが知る一流大学の出身。プライドが高く、異常なまでの自信は持っているのですが、一方で友人を作れないというコンプレックスをひそかに持っていました。幼少の頃から他人との交流が苦手で、たまにしゃべる機会があっても、人の話をさえぎり、「要するにこういうことでしょ」と話を強制終了。Fさんの口癖は「要するに」、「つまり」、「結局は」などの言葉が多く、自分の考えていることこそが最もすばらしいと思い込む〝脳内キング君〟だったのです。

 大学卒業後は大手企業への就職を希望していましたが、それはかなわず中堅どころの一般企業に入社。

 社会人になってからもコミュニケーションは苦手、相変わらずプライドだけは高い。通常の会話は成り立たず、一方的に自分の知識をひけらかすだけ。周囲からは、一見おとなしそうなのにしゃべり出したら止まらなくなるという、奇妙なキャラクターと見られていました

 〝脳内キング君〟で〝上から目線〟のFさんは、上司・先輩・同僚の自分への評価が低すぎると感じ、あっさりと退社してしまいます。

 自分という〝この僕〟を正当に評価してくれる会社が他にあると思ったからです。

 しかし、その後は転々と職場を変えていくだけでした。

 ゲームという仮想空間(異世界)でリア充になるも・・・

 そんな時期にFさんがハマっていったのが「オンラインゲーム」でした。不特定多数の人が同時に参加できるオンラインゲームは、ゲームの中で出会った参加者と協力したり、情報交換をしたりしながら共通の目的を達成していくゲームです。そしてFさんから発信する情報が、徐々に他のゲーム参加者から頼りにされるようになりました。オンライン上でFさんの噂と評価が広まり、ついにFさんは〝リスペクト〟の対象となりました。

 かつて私生活でも仕事場でも友人を見つけられなかったFさんは、オンラインゲームという仮想空間(異世界)の中に居場所を見つけたというわけです。

 自分が「必要とされている」、「頼りにされている」、「尊敬されている」という状況は、Fさんの「承認欲求」を大いに満たしました。

 かつて周囲から認めてもらえなかった自分の存在、それが今や〝キング〟。 

 その立場を継続させるために、快感を続けるために、ゲームから離れられなくなっていったのです。

 いったんのめり込むと歯止めが利かないFさんは、生活のすべてをゲーム中心としなければ気がすまなくなりました。

 共同トイレ・風呂なしの安アパートへと引っ越し、そのアパートの部屋で延々とゲームを続けます

  食事は安くて満腹感が得られる麺類やコンビニ弁当などの炭水化物。銭湯には行かず、たまに鍋で沸かしたお湯で身体を拭く程度。それもおそらく1か月に一度行えばいい方だったと想像できます。

 ご家族は、なかなか連絡が取れないFさんのことが心配になり、アパートを訪れました。

 部屋の中は、モノは多くはなかったものの、食べ散らかしや食べ残しが散乱、異臭が漂っていたとのことでした。

[ひきこもりからの脱却:吉濱セッション]

 Fさんは、受動型アスペルガーの特性が強く出ているケースにあてはまります。

 脳内の報酬系を司る部分の機能が非常に低く、いわゆるドーパミンやセロトニンの調整が少ないために幸福感や満足感が足りません。枯渇した状態をなんとか活性化させようと、ギャンブルで高揚感を得ようとしたり、買い物に満足感を求めたり、最悪の場合は薬物に走ったりすると考えられます。発達障害から「第2次障害(依存症)」を引き起こしたというわけです。

 実はFさんは、そんなひきこもりの状態を自分自身で「マズイ」と感じていました。それなのに脱け出せないのですから、まさに依存症だと思われます。

 対処法は非常にシンプル。強制的にゲームを捨てさせることでした。

 もちろん激しいゲーム依存状態ですから、すぐに捨てるはずはありません。アルコール依存症もそうですが、依存症の脳内は依存している対象を手放したくないと考えているため、自然に嘘をつくような状態になっています。

 Fさんも「捨てた」と平気で言っていました。それが嘘であることは目の動きで明らかです。

  僕は家族の方に協力をお願いしました。いったん、Fさんを自宅に呼び戻してもらい、Fさんの部屋に遠隔監視カメラを取り付け、Fさんを監視状態においてもらったのです。

 月に一度の個人セッションではその映像を提出してもらいます。そして「止めていない」、「捨てていない」状態であれば罰金を支払うというシステムを強行しました。

  またFさんは糖尿病の一歩手前でしたから、低糖質の食事を徹底させて体質改善も図はかりました。

  学生時代は、ジムでのトレーニングが好きだった時期があったと聞き、それも再開。スポーツによってドーパミンの分泌を活性化させるのが狙いです。

  Fさんがある程度、体質改善・肉体改造ができてきた段階で、僕は教師や講師などの「知識やノウハウ」を伝授する職業を勧めました。

  まずは実家の近所に住んでいる親戚の子どもたちに勉強を教えるボランティアからはじめることになりました。現在、実家の一室を教室へと改造中です。

(『今引きこもりの君へおくる踏み出す勇気』より)

 

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吉濱 ツトム

よしはま つとむ

発達障害カウンセラー

発達障害カウンセラー。幼い頃より自閉症、アスヘ?ルカ?ーとして悩み、長期間にわたる「ひきこもり」を経験。悲惨な青春時代を歩むか?、自ら発達障害の知識の習得に取り組み、あらゆる改善法を研究し、実践した結果、数年て?典型的な症状か?半減。26 歳て?社会復帰。以後、自らの体験をもとに知識と方法を体系化し、カウンセラーとなる。同し?症状に悩み人たちか?口コミて?相談に訪れるようになり、相談者数は 2000 人を超える。現在、個人セッションのほか、教育、医療、企業、NPO、公的機関からの相談を受けている。著書に『アスヘ?ルカ?ーとして楽しく生きる』(星雲舎)、『隠れアスヘ?ルカ?ーという才能』(KK ヘ?ストセラース?)、『発達障害に人のための上手に「人付き合い」か?て?きるようになる本』(実務教育出版)か?ある。


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