元ひきこもりで、自らのアスペルガーを克服し、立ち直った発達障害カウンセラー・吉濱ツトムさんは、2000人以上ものひきこもり者を治療してきた。本稿で、自身の経験をふまえ“ひきこもり脱出”への極意を伝えてくれた。(吉濱ツトム著『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』より)
 

ひきこもり脱出への生存戦略

 人生100年時代。特に最先端医療の進歩では長寿の可能性が高まっています。

「死ねない時代の到来」を予言する識者もいます。とはいえ、永遠の生命が私たちにあるわけではなく、まだ私たちの世代では40代〜50代は人生の後半戦でしょう。

 要は、残り50年という時間から逆算して、「社会参加の段取り」を考えなければなりません。

 ここで改めて本年3月に内閣府から公表された「生活状況に関する調査報告書」を見てみましょう。

 多くの中高年のひきこもり者61万3000人(40〜64歳)のうち、正社員として働いた経験が73・9%で約45万3000人。契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規雇用も39・1%で約24万人に上ります(100%を超えているのは複数回答、つまり正規も非正規も経験している層がいるため)。

 中高年のひきこもりの多くが、社会参加の第一歩は正社員からはじまっているのではないでしょうか。
 ただ、そこで現実的にドロップアウトした事実があるということではないでしょうか。つまり、「会社という組織で務まらなかった」という厳しい現実があったと読み取れるのです。
 本来ならば、ドロップアウトする以前に発達障害についての知見、認知があったら対策を立て、改善でき、会社を辞めずに済んだかもしれません。
 特に日本人に5%くらいはいると思われる「隠れアスペルガー(グレーゾーン)」の人であれば、「0か100か」的な極端な思考を好みます。

 真性アスペルガーだと「0か1か」、それこそ「生きるべきか死ぬべきか」的な狭隘な認知をします。劣等感がめちゃくちゃ強いために他の選択肢が見えてきません。僕も昔はそうでした。でも、その環境、具体的には職種、仕事に向いていなかっただけではないかという見極めがなかっただけかもしれないのです。

 

「ひきこもりのきっかけ」は何だったのか。内閣府の同調査では、以下の回答が報告されています。

退職したこと 36・17%
人間関係がうまくいかなかった 21・8%
職場になじめなかった 19・1%
就職活動がうまくいかなかった 6・4%

ここから、中高年のひきこもりの実像が見えてきます。箇条書きにします。

自分の適性を知らず、就職活動に失敗(新卒時)
   ↓
世間体を気にして入社した結果、間違った環境を選んだ
   ↓
特に興味もなく、好きでもない仕事をしていた
   ↓
やる気がなく、失敗を重ね続けた
   ↓
仕事仲間となじめず、いつの間にか孤立した
   ↓
次第に会社が苦痛になり、退職した
   ↓
そして、ひきこもった(結果)


 ということではないでしょうか。

 ならば、その場合の「ひきこもりからの脱出」は、いたってシンプルです。

 スタート地点まで〝巻き戻し〟をし、再スタートから別コースをたどればいいのです。つまり、こういうことです。

就職活動の失敗と向き合い、自分の適性を知る(再スタート)
   ↓
世間体は関係なく他人とを比較せず、自分に合った環境を探す
   ↓
「これなら続けられる」という業務を見つける
   ↓
自分にとっての得意分野で「小さな成功体験」を少しずつ重ねる
   ↓
一緒に働く仲間ともうまくやっていけそうな気がする
   ↓
仕事は確かに大変なこともあるが、やりがいも感じる
   ↓
持続的に働くことができる(結果)

 

 ひきこもり脱出の生存戦略とは、この認知ができることです。

 それができれば、具体的な行動が可能になり、前向きな社会復帰へとつながっていくのです。そこには、あなたという「一個人」としての立場が、会社員としての立場よりも大きく存在しているのです。

 僕の仕事は、来談者と向き合い本人に適する戦略を立てていくことですから、あなたの意向と目標=戦略が決まれば、次は戦術(どうすれば達成できるかという作戦)に入っていきます。その作戦のお話をしていきましょう。