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意外と知られていない銀行と国債のしくみ:中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義第3回

中野剛志「奇跡の経済教室」最新講義

 

■国債発行のしくみ

 

 銀行の貸し出しは元手となる資金の制約を受けない。逆に、貸し出しが預金を生む。

 これは、政府に対する貸し出しの場合も同じです。ですから政府の財政赤字、すなわち政府がお金を借りるときにも民間貯蓄の制約は受けないはずです。

 それどころか、政府にお金を貸して、そのお金で政府が財政支出をすると市中のお金の量が増えるわけですから、その結果、民間貯蓄は増えるはずです。そして、預金とは民間貯蓄ですから、「政府が財政赤字を拡大すると民間貯蓄が減る」というのは逆で、むしろ増えるはずです。

 ですから、財政赤字によって民間貯蓄不足に直面することなんて、あり得るわけがないのです。

 ただしこれは原理的な理解で、実際には日本政府は民間銀行に口座を持っていません。日本政府の口座は、日本銀行にあります。

 そこで、実際に、どうやって国債を発行されているかを次の図で説明しましょう。

 

出典)建部正義「国債問題と内生的貨幣供給理論」商学論纂第55号第3号(2014年3月)p599をもとに作成

 

 ①銀行が国債を購入するときには、銀行が日銀に持っている「日銀当座預金」で国債を買います。

 ちなみに、この「日銀当座預金」というのは、銀行が我々から集めた預金ではありません。銀行が日銀に置いている日銀当座預金は、我々の預金を積んでいるのではなくて、日銀から供給してもらっているものです。つまり、日銀から降ってきているお金であって、民間の貯蓄は使っていません。この日銀当座預金を使って、銀行は国債を購入します。

 銀行が国債を購入すると、その銀行の日銀当座預金から政府の日銀当座預金にその分の支払いが振り込まれます。例えば10億円の国債を買うと、10億円が政府の口座に振り込まれます。

 

 ②振込を得た政府は、その分の公共事業を企業に発注して、政府小切手で支払います。

 例えば、10億円振り込まれたから、その分の公共事業を発注して、建設会社に10億円の小切手を渡して道路を造ってもらいます。

 

 ③企業は取引銀行に小切手を持ち込んで、代金の取立を依頼します。

 この建設会社は、自身の取引銀行に政府から受け取った10億円の小切手を持ち込んで代金の取り立てを依頼します。

 

 ④銀行は小切手相当額を企業の口座に記帳します。ここで新たな預金が生れます。この銀行は、同時に、日銀に代金の取立を依頼します。

 例えば、銀行は、10億円の政府小切手を受け取ったら建設会社に10億円を振り込みます。この段階で、10億円という民間貯蓄が増えたのです。

 

 ⑤政府保有の日銀当座預金が、銀行の日銀当座預金勘定に振り替えられる

 すると政府の日銀当座預金から銀行の日銀当座預金に、10億円が振り込まれます。この時、銀行からすると、10億円分の国債を買うことで額が減った日銀当座預金に、同じ分だけ政府からまた振り込まれたことになります。そうすると日銀当座預金は減ってもないし、増えてもいない。元に戻ったことになります。

 

その後、政府が国債を発行したら、また①に戻ります。

 

 ということは、財政赤字によって金利が上がるわけがないのです。一周ぐるっと回ると、銀行の日銀当座預金の額は同じです。したがって、金利は不変。

 それどころか、この例では建設会社に10億円振り込まれているように、一周回るたびに④のところで民間貯蓄が増えていくのです。

 政府が支出して民間が受け取るんだから、民間の貯蓄は増えるに決まっているじゃないですか。財政赤字で民間貯蓄は減るのではなくて、増えるのです。ですから、どうして金利が上がるのか全く理解できないですし、現に財政赤字をこれだけ出し続けている日本の金利は上がっていないわけです。

 

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中野 剛志

なかの たけし

評論家

1971年、神奈川県生まれ。評論家。元京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治思想。96年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。01年に同大学院にて優等修士号、05年に博士号を取得。論文“Theorising Economic Nationalism”(Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に『日本思想史新論』(ちくま新書、山本七平賞奨励賞受賞)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『日本の没落』(幻冬舎新書)など多数。


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