【一個人】一日の利用者ほぼ0人! 秘境駅をめぐる旅<第四回>かつての木造駅舎は最果てのダルマ駅になっていた! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【一個人】一日の利用者ほぼ0人! 秘境駅をめぐる旅<第四回>かつての木造駅舎は最果てのダルマ駅になっていた!

祝・廃止撤回! 幸運にあやかりたい崖っぷちの駅たち


一日の利用者数が350万人……横浜市の人口に匹敵する世界最大の乗降客数を誇る「新宿」駅に対して、一日の利用者がほぼゼロ人という、信じられない駅も日本には数多く存在する! その名は「秘境駅」……。なぜか鉄道ファンをひきつける、そのディープで不思議な魅力に迫ってみたい。


■祖母が歩いて出迎えに来てくれそうな暖かい雰囲気の無人駅

ボロボロだった車掌車にサイディングを張ってリメイク。突き出た煙突がカワユス。

 抜海(ばっかい)を出た気動車は、深い原生森の中へ消えて行く。ふたたび当てのない原野に放り出されたような気分だ。

 このあたりは人が住む集落から遠く離れている。抜海の集落は駅からずっと離れた海側の抜海港に位置している。

 ここはなかなかの見どころのある港町で、ここはゴマフアザラシの越冬の場所だと言う。運が良ければ、消波ブロックの上に何の警戒心も無く、寝転がった「ゴマちゃん」たちの群れを見ることができる。

 11月から3月31日までは、「抜海港アザラシ観察所」なる無料の展望室が湾内に設置されるので、寒さに弱い方でも安心。余り知られていないが、ちょっとした自然動物園のようであるので、動物好きな方はぜひ冬に訪れていただきたい。

 このあたりは広大な湿地帯ということもあり、住居を建てるのにはいささか問題があるのかもしれない。だからと言って家が駅から遠すぎることに存在価値があるのだろうか。そう思っていると、到着したのが次の駅、勇知(ゆうち)である。

 ちょうど抜海の駅をまんま180度回転させたような構造の線型であるが、列車交換のシステムは取り払われている。たった一両の気動車には不釣り合いの長い本線独特のホームにぽつんと、四角い駅舎がある。良く見るとこれは、貨物列車の最後部に連結されていた車掌車なのだ。これが現在の勇知の駅舎! 抜海のような「従来の駅舎」は無い。

 かつては抜海によく似た良い感じの木造駅舎があり、駅員も常駐していたはずだ。待合室には大きなストーブがあり、冬場も一日中、待合室を暖めていた。その駅舎も老朽化から取り壊され、立派な駅舎に建て直されるかと思いきや、このような簡易駅舎にさせられてしまった。

地元の愛を感じる待合室のベンチ。

 車掌車は台車、車輪といった土台部分を外して、荷台部分だけを待合室としてリサイクルしている。その姿から鉄道ファンの間では、いつしか「ダルマ駅」と呼ばれるようになった。このダルマ駅は根室本線の花咲(はなさき)駅(廃止)が最初とされており、北海道を中心に全国各地に存在しているが、もっとも北限にある駅がここだ。

 JRは物流の変化によって、余剰になった貨物列車を「駅」として使うようになった。ダルマ駅になるのは、むしろ正式な駅である証拠。今となっては、仮乗降場から正式な駅に昇格した駅の方が、板張りに味のある待合室があったりして、北海道らしい味のある駅が多いことが皮肉な結末である。

駅前通りは何となく懐かしい感じがする。

 駅前は思いがけず、民家も郵便局も診療所もある、なかなかの規模の集落である。秘境駅と呼んだら地元の方々に失礼に当たる。これだけ人の営みのある駅なら、当分廃止は免れることだろう。それにしても、それならそれで、もっと立派な駅舎を奢ってやるべきだったのではないだろうか。

 かつて駅に常駐していた駅員さんは、今どうしているのだろうか。どこか他の駅の「ぽっぽや」として、働いているのだろうか。それともとっくに定年になって、悠々自適に優雅な老後を過ごしているだろうか。などと考えてみる。

 駅の近辺になにか観光地はないかと探ってみたところ、海へ向かって8キロの地点に「こうほねの家」がある。ここは利尻礼文サロベツ国立公園、唯一の休憩所がある施設で、初夏には「こうほね」の花が咲き乱れる。

こうほねの家。
こうほねの花と葉。地下茎は薬や食物にもなる。

「こうほね」というのは睡蓮に似た葉っぱの植物で、大変珍しい絶滅危惧種らしい。花道家の間では、手に入れることが困難な、睡蓮ならず「垂涎」の花であるそうだ。それだけのレアな花がこれだけ咲いていると言う場所は、全国でも珍しいので、お花好きな方なら必見。睡蓮よりも小振りで控えめな花は清楚でたおやかな雰囲気を醸し出しているので、花道家の心をひきつけるのだろうか。

 すぐ近くには、
「浜茄子の 咲きみだれたる サロベツの 砂丘の涯の海に立つ富士」と詠んだ森繁久弥の歌碑がある。

 森繁久弥といえば「知床旅情」のイメージが強いが、これはこれでレア度は非常に高いので、見に行く価値はあるだろう。ただし駅前にバスも、タクシーさえないので、鉄道利用ならば徒歩に限る。ゆっくり歩いて2時間。健脚の方にぜひオススメしたい。

森繁久弥の歌碑。彼方に見えるのは利尻富士。

<第五回へ続く>

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■木村鉄道株式会社より大幅なダイヤ改正のお知らせ(鉄旅タレント卒業します!)

木村鉄道株式会社の社員のみなさん、関係者のみなさん、いつも応援して下さっているみなさんへご報告です。

わたくし鉄旅タレント木村裕子は、来年2021年5月30日(日)を持ちまして、鉄旅タレントから心理のお仕事へ大幅なダイヤ改正(肩書変更)することといたしました。

私には10代の頃、「芸能人になりたい!」と「心理に関するお仕事をしたい!」という2つの夢がありました。

19歳のときに「芸能人行き」の列車を選び、そこでやってみたい夢リスト100個を作って挑戦した結果、なんと芸歴19年でその100個を叶えることができました。

この100リスト達成をキッカケに、昨年からもうひとつの夢だった心理に関するお仕事を副業で始めたところ、有難いことに徐々にお客さんが増えていき、そちら1本で生活できるまでになりました。

心理の仕事の詳しい内容は、

★公式HP  「虐待で育った私が世の毒親問題をめった斬る!毒親との正しい戦い方教えます。」

★概要  30歳まで母の教え「お前は幸せになってはいけない」を守り続けたおバカ。19歳で家出、34歳で親と縁を切るなどを経て現在良好な親子関係に。その経験を生かしてブログ更新中♪  を参照してください。

そのためここでいったん鉄旅タレントに区切りをつけて、30代最後の挑戦として肩書きを変え、新型列車「解毒案内人」行きへ乗り換えすることを決めました。

肩書きは変わりますが、今まで同様、事務所はマセキ芸能社になります。

今後の鉄道関係のお仕事は、

肩書き:解毒案内人
名前:木村裕子
趣味・特技:日本の鉄道を完乗したレベルの乗り鉄(元鉄旅タレント)
主な活動:執筆、講演会、無料・有料相談、メディア出演など

という立場でもご依頼頂ける場合には、喜んでお受けさせていただきます!

(※いったん鉄道関連のお仕事をリセットするため、現在のレギュラーのお仕事は、来年5月末までに卒業という方向で話し合い中です。)

19歳のとき、「芸能界にコネもない、お金もない私がどこまで行けるか!?」と宣言し、ここまで木村鉄道に乗車&応援して下さったみなさんには本当に本当に本当に本当に本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

そのため、今後のコロナの状況にもよりますが、あと半年間で出来るだけ全国あちこちでみなさんと会えるイベントやオンラインイベントが出来ればと思っています!

そしてイベントやメディア等への出演案件がございましたら、ぜひお声がけお待ちしています♪

リニューアルまであと半年、よろしくお願いいたします!

※木村鉄道の廃線ではありません。笑


■映画「電車を止めるな!~のろいの6.4km~」 木村裕子役で出演させて頂きました

廃線寸前の鉄道会社が企画した、起死回生の「心霊電車」企画
カメラを前に社員全員で必死に心霊現象を演出するが
視聴者からの厳しい書き込みで炎上していた。
しかし、丑三つ時に本物の霊現象が起こり始める。
電車は止まることなく走り続け、終着駅まであとわずか...
参加者、そして銚子電鉄の運命は───!?

上映場所のご案内・チケット購入はこちら→https://www.dentome.net/

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