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ヒントは古代ギリシア。「自分らしい生き方」をロボットやAIが実現する理由

自律的な生き方を達成する。

■古代ギリシアでの「労働」=人間を拘束するもの

 前回の記事『AIに仕事を奪われないために。身につけるべき「ほんとうの教養」』でも述べたが、古代ギリシアでは「労働」とは人間を拘束するものと考えられていた。人間は生きるために食事を作らなければならない。食事を作るためには農作業や狩猟、牧畜、漁業のような食糧生産、食糧の輸送や販売、調理といった作業が必要となる。他にも、身の回りで使う物を作ったり、衣服や住居を作ったり、掃除をしたりと、人間が生命を維持するために不可欠となる作業はたくさんある。

 現代ではお金を支払えばそういった作業をサービスとして受けることができるが、支払うお金を稼ぐためには自らも労働をしなければならない。いずれにしても、生きるために労働しなければならないということになる。

 一方、古代ギリシアには労働の拘束から解放されて自由に生きられる人々も存在した。都市国家(ポリス)の「市民」である。市民としての資格を持つ成人男性は、労働を「奴隷」や家庭の女性たちに任せて、都市国家の運営の仕事や兵役のような公共的な活動に携わるかたわら、広場に集まって議論をしたり、劇場で演劇鑑賞をしたりと、自由な生活を送っていた。「リベラルアーツ」とは、こういった意味で「自由」な市民のための教養でもあった。

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大賀 祐樹

おおが ゆうき

1980年生まれ。博士(学術)。専門は思想史。

著書に『リチャード・ローティ 1931-2007 リベラル・アイロニストの思想』(藤原書店)、『希望の思想 プラグマティズム入門』 (筑摩選書) がある。


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