国葬をやるなら弔意表明を国民に求めよ!【佐藤健志】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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国葬をやるなら弔意表明を国民に求めよ!【佐藤健志】

佐藤健志の「令和の真相」46

2022年8月27日、東京・新宿で野党の国会議員や市民ら数百人が、来月27日に行なう安倍元総理の国葬に反対するデモを行なった。

 

◆統一教会問題の本質は何か

 7月に発生した安倍晋三元総理(以下「安倍総理」)の殺害事件を契機に、わが国では重大な事実が浮上しました。

 安倍総理本人をはじめ、自民党の少なからぬ国会議員が、韓国で生まれた新興宗教・統一教会(現・世界平和統一家庭連合)、およびその関連団体と関係を持っていたのです。

 

 関係の深さは人によってさまざまですが、教団施設を何度も訪れたり、選挙でも支援を受けたりするなど、かなり深く関わった者もいる模様。

 憲法改正をめぐる自民党の案が、統一教会の関連団体「勝共連合」の提唱しているものと似通っているうえ、政教分離の原則を緩めることで、同教会の政治活動をより容易にすることも指摘されています。

 自民党に限らず、野党の立憲民主党にも、同教会と何らかの関わりを持った議員が複数いることが判明しました。

 

 上記の事実はなぜ重大なのか。

 これを理解するには、国政の目的は何かという点に立ち返らねばなりません。

 

 国政の目的は国益を満たすこと。

 そのために策定される計画が〈国家戦略〉です。

 そして「国益が満たされる」とは、国家の存立と繁栄の安定的な維持を通じて、国民が心配なく豊かに暮らせる状態、すなわち経世済民を可能なかぎり実現することにほかならない。

 

 言い換えれば、ナショナリズムこそ国政の大前提。

 日本国憲法の前文にも、こう書いてあるくらいです。

 

 【そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。】(原文旧かな。以下同じ)

 

 ところが統一教会は、発祥の地が韓国のためか、教義に反日的な要素が目立つ。

 日本は「サタン(悪魔)の国」であり、とりわけ朝鮮にたいしては植民地支配の罪を犯したため、それを償うためにも日本人(の信者)は貢がねばならないというのです。

 これが日本の国益や、日本人の幸福と両立するでしょうか?

 同時に統一教会は、いわゆる「霊感商法」や、信者による多額の献金、大規模な合同結婚式の開催など、さまざまな社会問題を引き起こしてきました。

 

 わが国の国会議員が統一教会と関係を持ったり、まして支援を受けたりするのは、「ナショナリズムこそ国政の大前提」という原則を揺るがすものであり、ゆえに重大なのです!

 ちなみにこれは、地方議員なら構わないことを意味しません。

 経世済民を目的にしなければならないのは、地方自治も同じだからです。

 だいたい地元への愛着こそ、ナショナリズムの基盤なのですぞ。

 

 しかるにこのような視点から、統一教会と政治家との関わりを批判する主張は、私の知るかぎり非常に少ない。

 同教会の起こしてきた社会問題、とりわけ霊感商法や多額の献金といった〈経済被害〉にばかり注目するものがほとんどです。

 なぜ、そうなるのでしょうか? 

 

◆見失われた国政の大前提

 「ウクライナ戦争と安倍総理殺害」(第45回)、さらには平和主義は貧困への道 または対米従属の爽快な末路』をお読みになった方には、もうお分かりですね。

 戦後日本は、無残な敗北に終わった昭和初期の戦争を否定しようとするあまり、平和主義の名のもと〈国家の否定〉や〈政府への不信〉をテンプレとしてきました。

 国政は国民の利益を満たすためのもの、そう謳った憲法前文まで、直後にこんなことを言い出す始末。

 

 【(日本国民は)平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。】

 

 戦後日本において、国益とは国家戦略を通じて主体的に実現されるものではなく、他国(民)の「公正と信義」にたいする信頼、要するに対外依存によって実現されるものなのです!

 くだんの対外依存を、アメリカへの従属という形で追求するのが「保守」で、社会主義、ないしコスモポリタニズムへの憧れという形で追求するのが「革新(=左翼)」、ないしリベラル。

 

 ナショナリズムこそ政治、とくに国政の大前提であることが見失われているのですよ。

 だから「なぜ政治家が、統一教会と関わってはいけないのか」が分からなくなる。

 向こうにしてみれば便利な話。

 「勝共」「平和」「家庭」など、日本の国益にもプラスになるようなスローガンさえ掲げていれば、根本のスタンスがナショナリズムに反する点は見過ごされるのです。

 それどころか「自分はナショナリズムを信奉しており、〈家庭重視〉のような伝統的価値観を尊重している」と主観的に思っている人々、つまり保守ほど気を許すに違いない。

 

 いや、政治家は統一教会と絶対に関わってはいけないとまで言うつもりはありませんよ。

 「ナショナリズムを否定して、反日的な主張に賛同することこそ、日本の国益を満たす道」と本気で信じており、公式の場でもその旨を発言する覚悟があるのなら、それはそれで認められるべきでしょう。

 ただし、そこまでの覚悟を持つ政治家は皆無のようなので、この点は脇に置くことにします。

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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