■読むのが辛かった介護本

連載「母への詫び状」第三十五回〉

 
 
 

 介護に関する本が多数出版されている。

 自分が親の世話に忙しい時期は、それらの介護本を読む時間的な余裕も、精神的なゆとりもなかった。わが読書歴は介護期間中の6年間ほど、ぷっつりとブランクが空いている。

 介護について書かれた本は時として、読むのが修行のような苦をともなう。参考になるかと買ってはみたものの、ページをめくり始めると身につまされて先へ進めず、完読できない本も多い。

 悲しすぎるのは、介護殺人について書かれたノンフィクションだ。特に息子が介護していた母を手にかけた事件の話などは、とてもまともに読めない。殺人というより心中に近いケースもある。

長年の介護に疲れ果て、認知症の母親の首を絞めてしまった長男。自分も後を追おうと首を吊るが、命を取り留める。裁判では長男が献身的な介護をしていたことや、経済的に追い詰められていたこと、母親が自分で死のうとしたことなども明かされ、情状酌量による温情判決が言い渡される。しかし、数年後、その長男は自殺してしまう。遺品には「一緒に焼いてほしい」というメモとともに、母親と自分のへその緒が入っていたという。

『介護殺人 追いつめられた家族の告白』(毎日新聞大阪社会部取材班)より抜粋。

 ああ、だめだ。文字にするだけでつらい。介護するうちに母親と一体化していく感覚はよくわかる。あれは危険だ。

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