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今をもって謎が残る
レイテ湾目前の謎の反転

レイテ沖海戦と栗田健男中将 第7回

 レイテ湾の第7艦隊は血相を変えた。ハルゼーに緊急電を打ち、救援を求めたが、どう考えても間に合いそうにない。もしも日本の戦艦群が艦砲射撃をすれば、輸送船や上陸した将兵、火器類、糧食などが木っ端微塵になってしまう。マッカーサーは最大の危機を迎えた。

 日本軍にとっては最大の好機と言ってよかったが、栗田はなぜかレイテ湾を目前にして艦隊に反転するように命じた。正午過ぎから空襲が激しくなったことで、第3艦隊が迫っていると判断したためとも言われる。ただし、敵機動部隊との決戦を決意したのか、全滅を避けて退避したのかとなると意見が分かれる。

 戦後、栗田の証言も曖昧である。輸送船団を葬るほど冷徹な人間ではなかったと指摘する声もあるが、いずれにしても「謎の反転」は今も謎のままである。

 

 

 

 

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松田 十刻

まつだ じゅっこく

1955年、岩手県生まれ。立教大学文学部卒業。盛岡タイムス、岩手日日新聞記者、「地方公論」編集人を経て執筆活動に入る。著書に「紫電改よ、永遠なれ」(新人物文庫)、「山口多聞」(光人社)、「撃墜王坂井三郎」(PHP文庫)など。


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