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目の不調が 引き起こす体の不調

QOLを高める鍵は 目の健康にアリ!

■近くを見続けると副交感神経が働きすぎ

「近くを見続けると、自律神経が乱れてしまう」と梶田さんは話す。これはどういう意味なのだろうか。
 自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経系で構成されている。これらが互いに働き合い、体の生理的機能を調節する。この自律神経は目の機能とも密接に関係している。

「ピントを合わせるのも、自律神経の役割です。遠くを見る時は交感神経が働きます。一方、近くを見る時は副交感神経の働きが活発になります。そのバランスが悪くなると、自律神経がおかしくなってしまうのです」

 交感神経が優位な状態と、副交感神経が優位な状態を行ったり来たりするのが、正しい目の使い方。だが、実際にはなかなか難しい。現代社会の中では、遠くよりも近くを見続けなければならない場面が圧倒的に多くなっているのだ。

 スマホの場合、目との距離は15~20cm。長く見続ければ、副交感神経ばかりが働くことになってしまう。ノートパソコンやタブレットでも約50cm。距離は多少遠くなっても、やはり自律神経に相当な悪影響をもたらすのは避けられない。新型コロナウイルスが猛威を振るい始めてからは、外出する機会が減って、遠くを見ることが少なくなっている人も多い。

「その結果、自律神経のバランスが崩れると、さまざまな体の不調が出てくる。最初のうちは、軽い頭痛や肩こり。しばらくすると、めまいや吐き気がひんぱんに起こり、自律神経失調症と診断されるケースも少なくありません」

 なかには、うつ病と診断されて、精神科に通院しているケースもあったという。だが、いくら治療しても、症状は一向に改善しない。目が原因のうつ病は精神科では治せないのだ。本当の原因がわからないまま、治療を続けても、いたずらに通院期間だけが長引くことになる。

「そうした患者さんに、自分に合った眼鏡をかけてもらい、正しく目を使えるようにすると、たいてい元気になってくる。目という器官は、ある意味、すごく怖い部分を持っている。見えているから大丈夫と放っておくと、一見、目とは関係のない部分で体調不良におちいっていることも多いのです」

 逆に言えば、体のあちこちに不調が現れるのは、目の状態が悪くなっているのを脳が訴えているからなのだ。そのことを梶田さんは「脳の堪忍袋の緒が切れた」という言い方をする。目に問題がないか調べ、正しく対処すれば、症状が大きく改善することもめずらしくないのである。

 

不調①自律神経の乱れ

【近くを見る時は副交感神経が優位】

【遠くを見る時は交感神経が優位】

どことなくピントが合うところを「調節安静位」と呼び、それより遠くにピントを合わせる時に交感神経、近くに合わせる時には副交感神経が活発に働く。

近くを見続けると…
交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、体のいろいろな場所に不調が起きてくる。
不眠・頭痛・吐き気・体のだるさ・めまい・冷え・動悸などを引き起こす

 

不調②うつ病

老眼を放置していると、気力が著しく落ちていく。集中力が低下するので、仕事にも影響が出てくる。人との交流も次第に面倒になり、うつ症状が現れる。根本の原因は目にあるので、精神科などで治療を受けてもなかなか改善しない。

 

不調③目の疲れ・肩こり

目のピント合わせに不具合が起こってくると、自律神経のバランスが崩れやすく
なる。そこで最初に起こるのが目がかすんだり、しょぼしょぼするといった疲れ
目。さらに進むと肩周辺の血流が悪くなり、肩こりや慢性的な頭痛に悩まされるようになる。

 

不調④ドライアイ

パソコンやスマホを凝視していると、普段よりもまばたきの回数が激減すること
がわかっている。その結果、涙が出にくくなり、ドライアイの症状を引き起こしてしまうのだ。

 

不調⑤更年期障害

目による自律神経の乱れが更年期障害と似た症状を起こすこともある。梶田さん
は「その女性に合った眼鏡を処方したら、更年期障害が治ったというケースも多い」と話す。

 

早ければ早いほど良い!遠近両用眼鏡のススメ
「私が老眼鏡を勧めることはありません」と梶田さん。老眼が始まった患者に処方する眼鏡はすべて遠近両用。
「手元から遠くまで広い範囲が見え、かけたままで生活できる遠近両用は年齢が高い人だけでなく、若い世代にもお勧めです」と話す。
一昔前は遠近両用というと境目があり、遠くと近くを見る二重焦点レンズが普通だった。
現在は劇的に進歩。境目はまったくなくなり、さまざまな距離にピントが合わせられるようになっている。

(一個人増刊「眼鏡LIFE」より)

 

梶田雅義さん(梶田眼科 院長)
福島県立医科大学卒業後、同大学講師、カリフォルニア大学バークレー校
研究員などを経て2003年から現職。
名医・専門医の調査を実施する米国ベストドクターズ社主催の Best Doctors in Japan 2012‒2013、2014‒2015、2016‒2017、2018‒2019、2020‒2021に選出。

 

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