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現代病「スマホ老眼」に要注意!

QOLを高める鍵は 目の健康にアリ!

■近くにピントを合わせ続け目に大きな負担が

 近年、目の健康を取り巻く環境が急激に変化している。パソコンや携帯電話の普及、スマートフォンの登場。さらには、コロナ禍でのテレワークやオンライン授業……。目を酷使する場面が非常に多くなっている。
「スマホを持つ人が増えて、年齢に関係なく、老眼になるケースが目立っています。いわゆる“スマホ老眼”です。近い距離にピントを合わす時間が長くなり、目に大きな負担がかかっているのです」
 こう話す梶田眼科院長の梶田雅義さんは、目の調節機能と自律神経の関係を長年、研究してきた。
「目が頑張りすぎると、ピント調節をコントロールする自律神経にかたよりが出てきて、それが体の不調につながっていく。つまり、目の健康を保つことは、QOL(生活の質)を高めることを意味するのです」

■新陳代謝しない水晶体は年齢とともに硬くなる

 私たちは当たり前のように、目を通して物を見ているが、その仕組みは意外に複雑だ。外から入ってくる光はまず、目の入口部分ともいえる角膜を通る。この角膜が光を屈折させて、目の中に送り込むのである。そして、通り道の瞳孔から、適度な量の光が取り込まれる。
 その光は水晶体を通る際に、ピントを合わせる働きをする。厚みを変化させて、焦点距離を調節。それが目の奥にある網膜に、ピントの合った像として映し出される。だが、そこで工程 は終わりではない。光の情報を網膜の視細胞が電気信号に変換。左右の目から送られた信号を脳がひとつに統合し、像として認識するのだ。
「レンズの役割をする水晶体は特に重要です。水晶体を輪状に取り囲む毛様体筋という筋肉が伸び縮みして、水晶体の厚みを変えてピント調節をします。ところが、年齢とともに水晶体は硬くなっていってしまうのです」
 母親の胎内にいる時に完成する水晶体はその後、新陳代謝をしないのだ。硬くなってくると、分厚くなりにくくなり、近くの物を見る際、ピントを合わすのが難しくなる。いわゆる老眼の始まりである。

 

[物が見える仕組み]

角膜が外界の光を屈折させて目の中に送り込む。その後、光は水晶体でさらに屈折し、目の奥の網膜上で焦点が結ばれ、像が映し出される。

【近くを見るとき】

水晶体を輪状に取り囲む毛様体筋が収縮して水晶体を膨らませると、近くの物にピントが合う。年齢とともに水晶体は分厚くなりにくくなる。

【遠くを見るとき】

遠くを見ようとする際、毛様体筋は緩んで、水晶体は薄くなる。屈折率を小さくして、ピントを合わせる距離を長くするのである。

 

■目を労わる日常のアイケア7選

 目をケアするには、温める、マッサージ、遠くを見るなど、さまざまな方法があります。ここでは簡単にできて効果的なものを取り上げたので、ぜひ実践してみてください。

①目を温める 
目を温めることで、毛様体筋の緊張がほぐれます。入浴の際に湯に浸して絞ったタオルをまぶたの上に乗せ、お風呂に入りながら10分ほどリラックスすると効果的。市販のホットアイマスクを使用する場合は、低温やけどに注意してください。
 
②目を閉じてマッサージ
 「顔を洗う際に、まぶたを指でマッサージすると、目の周囲の血流が良くなるので、ぜひ習慣化してほしい」と梶田さんは勧めます。目のまわりには眼精疲労に効くツボもたくさんあるので一石二鳥。眼球を押さないように気をつけましょう。
 
③寝る前に遠くを見る
 ふとんに入る前に必ず遠くを見る習慣をつけておきましょう。できれば、ピントが合うもっとも遠いところを見るようにします。この手順をせずにそのまま眠ってしまうと、前日の目の疲れが朝まで残ってしまうことに。 

④強い瞬きを繰り返す
 強く瞬きをすると、上下の眼瞼にあるマイボーム腺という場所から脂が出てきて涙に混ざります。すると、乾きにくい涙になって目をうるおすことができるのです。コロナ禍の中、テレワークで急増しているドライアイを改善することにもつながります。 

⑤仕事中などは目を冷やす
目のケアでは温めるほうが効果があるとされていますが、冷やしたほうがいい場合もあります。仕事のしすぎで目が充血していたり、炎症を起こしているケース。目の中の血管が膨張している時に温めては逆効果です。冷やして血管や筋肉を収縮させるのがベターで気分もスッキリします。 

⑥10分に1回、1~2秒だけ遠くを見る
「スマホやパソコンを見続けて収縮してしまった毛様体筋をゆるめる時間を一瞬でもつくるのが大事」と梶田さん。ただし、いくら遠くてもピントが合わなければ意味がありません。数mでもいいから、ピントが合う距離に目を向けるようにします。 

⑦目を上下左右に動かす
遠くを見たり近くを見てピントをずらしていくのがアイケアの基本ですが、指を使って目を動かす方法もあります。「自分の指を立てて上下左右に動かし、それを両目で追いかけるのです」と梶田さん。この眼球運動によって、ピントを合わす力や集中力が高まります。

■目の疲れをとるための大切なポイント

 最近、オーストラリアで提唱されている目のケアが注目されています。それは「3つの20」というもの。20分間、近くの物を見たら、20秒間、20フィート(約6m)離れた場所を見て、目を休ませようというものです。近視の進行を抑えるために編み出された方法ですが、これは老眼のケアにも通じると、梶田さんは話します。
「もしSE(システムエンジニア)さんだったら、20秒間もパソコン画面から目を離せないような気もしますが、考え方としては正しい。実は、私はもっとずっと前から似たようなことを考えていて、患者さんたちに指導している方法があるんです」
 それは「10分間に1回、1~2秒間、遠くを見よう」という方法。梶田さんが大学にいた頃から、患者たちに推奨してきました。
「視線を3~4mほど移すだけでも構いません。1~2秒なら、SEさんでも仕事に支障はないでしょう。パソコン画面を見続けているような場合、水晶体の上下にある毛様体筋は収縮しっ放しになっているので、時々ゆるめてあげないといけない。こうしたことを意識的に習慣化していけば、目にはとてもプラスになるはずです」
 寝る前に遠くを見るのも同様です。
「遠くを見ることで目の疲れをとるのです。そのまま就寝すると、疲れを朝
まで持ち越してしまうことになる。見る距離はピントが合うぎりぎりの遠い
ところを目安とするのがコツです」
 目を温めるのも、疲れをとるには効果的。目のまわりの血流が良くなり、
疲れが軽減されます。
「お風呂に入っている時に、お湯に浸してから絞ったタオルを10分ほど、目
の上に乗せておけばいいでしょう。市販のホットアイマスクもありますが、
なかには温度が上がりすぎるものもあるので、低温やけどにはくれぐれも注
意してください」
 以前、常識だったことが今では通用しないものもあります。たとえば、ブルーライト。パソコンの液晶画面が発するブルーライトが目に良くないとされ、それをカットする眼鏡が売り出されました。ブルーライトを多量に浴びると、睡眠を促す働きを持つホルモン・メラトニンの分泌が抑制されることがわかっています。
「初期の頃のパソコンはブルーの色が強かったようですが、その後は改良さ
れ、それほど強くなくなり、目への影響もほとんどない。目に悪いと広めた
のは一部の眼鏡屋さんたちですが、ブルーライトカットのレンズで今の画面
を見ると、暗くなってしまい、かえって目に良くありません

■老眼を治すことはできない 頼りになるのは眼鏡 

「勘違いしてはいけないのは、どんなケアをしても、老眼が治るわけではないということです」と梶田さんは話す。レンズの役割をしている水晶体は胎児の段階で完成し、以降は新陳代謝が起こりません。つまり、私たちの目は生まれると同時に老化が始まるのです。アイケアの目的は、老眼の進行を遅くしたり、目の不調によって起こる体調不良を防ぐためです。
「一番の老眼対策はやはり、遠近両用眼鏡だと思います。私が使い始めたの
は35歳の時から。今、68歳ですから33年間、使い続けていることになります。その間、とても快適なQOLを得ることができている。自分自身で実証できているからこそ、みなさんにも遠近両用眼鏡を勧めるのです」

 

(一個人増刊「眼鏡LIFE」より)

梶田雅義さん(梶田眼科 院長)
福島県立医科大学卒業後、同大学講師、カリフォルニア大学バークレー校
研究員などを経て2003年から現職。
名医・専門医の調査を実施する米国ベストドクターズ社主催の Best Doctors in Japan 2012‒2013、2014‒2015、2016‒2017、2018‒2019、2020‒2021に選出。

 

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