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安倍外交に見る「失敗の法則」〈前編〉

なぜ安倍外交はうまくいかないのか

■安倍総理はタンカを切ったが・・・

 

 まずは9月11日〜13日にウラジオストックで開催された「東方経済フォーラム」。
 12日の全体会合で、総理はこんなスピーチをしています。
 https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/statement/2018/0912eef.html 

 ロシアと日本は、今、ロシアの人々に向かって、ひいては世界に対して、確かな証拠を示しつつあります。

 ロシアと日本が力を合わせる時、ロシアの人々は健康になるのだというエビデンスです。

 ロシアの都市は快適になります。

 ロシアの中小企業はぐっと効率を良くします。 

 ロシアの地下資源は、日本との協力によってなお一層効率よく世界市場に届きます。

 日本とロシアには、他の二国間に滅多にない可能性があるというのに、その十二分な開花を阻む障害が依然として残存しています。

 それこそは皆さん、繰り返します、両国がいまだに平和条約締結に至っていないという事実にほかなりません。

 プーチン大統領、もう一度ここで、たくさんの聴衆を証人として、私たちの意思を確かめ合おうではありませんか。

 今やらないで、いつやるのか、我々がやらないで、他の誰がやるのか、と問いながら、歩んでいきましょう。(中略)

 力強い拍手を、聴衆の皆さんに求めたいと思います。 

 こう言っては申し訳ありませんが、話者が聴衆に拍手を求めずにいられないスピーチなど、あまり出来がよろしくないに決まっている。
 出来の良いスピーチなら、放っておいても拍手が起こるからです。 

 だとしても、総理は頑張った。

 平和条約の締結について、プーチンにタンカを切ったではありませんか。

 さすが、外交の安倍!

 ・・・と言いたいところですが、ちょっと待て!!

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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