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安倍外交に見る「失敗の法則」〈前編〉

なぜ安倍外交はうまくいかないのか

 
 

■戦後日本型平和主義の問題

「平和」と「平和主義」は、似て非なるもの。

 英語でも、前者が「ピース(peace)」なのにたいして、後者は「パシフィズム(pacifism)」。語源的なつながりはありますが、別物です。

「社会」と「社会主義」がいかに違うかを考えてみれば、事は一目瞭然でしょう。20世紀前半のフランスを代表する劇作家であり、外交官でもあったジャン・ジロドゥなど、こう喝破しました。

「平和主義者とは、戦争を阻止するため、常に戦う用意のある人間のことだ」

 とはいえ、あらゆる平和主義(者)が、ジロドゥほど毅然としているわけではありません。わけても戦後日本における平和主義は、〈戦争を阻止するためなら常に戦う用意がある〉どころか、〈とにかく戦うことだけはしたくない〉という臆病風丸出しの代物。

 戦いをとにかく回避するには、どうしたらいいか? あるいは、何をしなければいけないか?
 ・・・お分かりですね。他国との対立が深刻化しないよう、八方美人的な事なかれ主義に徹する必要があるのです。これこそ、戦後日本が長らく取ってきた外交方針にほかなりません。ちなみにこの方針、「低姿勢(外交)」と呼ばれてきました。

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佐藤 健志

さとう けんじ

佐藤健志(さとう・けんじ)
 1966年、東京生まれ。評論家・作家。東京大学教養学部卒業。
 1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で、文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を当時の最年少で受賞。1990年、最初の単行本となる小説『チングー・韓国の友人』(新潮社)を刊行した。
 1992年の『ゴジラとヤマトとぼくらの民主主義』(文藝春秋)より、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。これは21世紀に入り、政治、経済、歴史、思想、文化などの多角的な切り口を融合した、戦後日本、さらには近代日本の本質をめぐる体系的探求へと成熟する。
 主著に『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)、『右の売国、左の亡国 2020s ファイナルカット』(経営科学出版)、『僕たちは戦後史を知らない』(祥伝社)、『バラバラ殺人の文明論』(PHP研究所)、『夢見られた近代』(NTT出版)、『本格保守宣言』(新潮新書)など。共著に『対論「炎上」日本のメカニズム』(文春新書)、『国家のツジツマ』( VNC)、訳書に『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』( PHP研究所)、『コモン・センス 完全版』(同)がある。『[新訳]フランス革命の省察 「保守主義の父」かく語りき』は2020年12月、文庫版としてリニューアルされた(PHP文庫。解説=中野剛志氏)。
 2019年いらい、経営科学出版よりオンライン講座を配信。『痛快! 戦後ニッポンの正体』全3巻に続き、現在は『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』全3巻が制作されている。

 

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  • 2018.09.15