振り込め詐欺「出し子」に堕ちた19歳を救え〈前編〉 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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振り込め詐欺「出し子」に堕ちた19歳を救え〈前編〉

新之助からの着信。いやな予感は的中し…

■極度の人間不信

「実は今新宿駅でさっきの友達が逃げてきていて一緒にいるんですよ」私は、新之助の性格はある程度わかっているのでここでピンときた。話を途中でさえぎり、「いや、友達じゃなくて全部新之助の話なんでしょ。正直に言わないと助けるも何もできないよ」と返した。

 すると新之助は涙声になって「すいません、ほんとにすいません。俺、誰も信じられないんですよ」と言う。

 最後の言葉に私も頭にきて「信じられないなら、なんで俺に電話してきたの? 俺は仕事の付き合いもやめてわざわざ抜けてきたんだよ」と怒気を含む口調で言った。

「俺、ほんとに神里さんのことを信じていいですか? もうだめです。今日も“仕事”(詐欺)をしてしまって」絞り出すように新之助は言った。

 

 振り込め詐欺を含む組織的な犯罪は年々厳罰化している。これは今までのケースと違ってシャレにならない――。そう思った私は、「今、新宿にいるんだよね。タクシーですぐ向かう。少しだけ俺のことを信じてもらえないかな」とさっきとは違い優しい口調で言った。

「わかりました」その言葉を聞くや、私はすぐに大通りにでてタクシーに乗り込んだ。

「新宿駅までお願いします」私はそう告げて大きくため息をついた。

(後編に続く)

※氏名は仮名です。少年のプライバシーを尊重し、個人が特定されないように配慮しています。

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神里 純平

1979年生まれ。沖縄県在住の会社員。

中堅のリサイクルメーカーにサラリーマンとして勤務し、会社内から出る産業廃棄物の収集運搬やグループ内の在庫移動の業務に従事する毎日。少年の頃には紆余曲折があったが、現在は友人たちと一緒に、仕事後や休みの日に子どもたちに格闘技を指導することがライフワークとなっている。好きな言葉は「人生一生雑巾がけ」。著書に『沖縄裏の歩き方』(彩図社)がある。


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