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古代日本のエリート・聖徳太子は誰に殺されたのか?

聖徳太子は誰に殺された?①

■聖徳太子は本当に“聖者"だったのか?

 古代史において、聖徳太子ほど多くの謎がまつわる人物はいないといわれる。 これまでも多くの学者がこの謎に挑み、あらゆる推論が飛び交ってきた。しかし残念なことに、どれも聖徳太子の実像を明確にするまでにはいたっていない。それどころか、多くの説が登場すればするほど、逆に聖徳太子の謎は深まるばかりなのである。これほど知名度があり、しかも古代最大の政治家かつ宗教家であった人物の実像が把握できないのはなぜか。これまでの説には、どこか根本的で、重大な欠点が潜んでいるのではないか。

 たとえば、聖徳太子は聖者だったという点について考えてみよう。

これは、どの文献を読んでも「聖徳太子は聖者である」という証言がみられることから、誰もが信じて当然のことだろう。

 しかし、本当にそうだったのか? たしかに聖徳太子は仏教を日本に導入し、多くの功徳をほどこした「聖人」であった。しかしその一方で、聖徳太子は政界でも活躍した"政治家"でもあった。 

 どのような社会においても、高邁な思想と現実は往々にして相入れず、葛藤を生むものである。いくら聖徳太子が聖者として理想をかかげようとも、ひとたび政治的な活動をすれば、必ず一人や二人の敵が生じるのは当たり前のことである。ということは、政治家であった聖徳太子にも、少なからず敵対勢力が存在していたにちがいない。

 ところが、正史である『日本書紀』をはじめとする文献のどこを探しても、聖徳太子を悪く記したところはまったくといっていいほど見当たらず、聖徳太子はつねに完璧な姿として描かれている。逆にいえば、これほど不自然きわまりないことはない。 では、なぜ聖徳太子を聖者として描きつづけたのだろう。 この大きな疑問を抱き、多くの文書を読みあさってみると、意外な事実に直面した。 というのもほかならぬ『日本書紀』が、遠まわしに、聖徳太子の悪口を書いていた ことに気付いたからである。

 読者の多くは、「いったい『日本書紀』のどこに聖徳太子の悪口が書いてあるのか?」と不審に思われるにちがいない。

 しかしまさに「灯台もと暗し」とはこのことであって、『日本書紀』が太子を聖者扱いしているのは、あくまで建前上のことであり、その裏側ではうっかり本音を吐露しているような記述がみられるのだ。

 しかも、かなり陰湿な手口で聖徳太子をひきずりおろしている。

(次回に続く)

〈『聖徳太子は誰に殺された?』〉より

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関 裕二

せき ゆうじ

 



1959年生まれ。歴史作家。仏教美術に魅了され、奈良に通いつめたことをきっかけに、日本古代史を研究。以後古代をテーマに意欲的な執筆活動を続けている。著書に『古代史謎解き紀行』シリーズ(新潮文庫)、『なぜ日本と朝鮮半島は仲が悪いのか』(PHP研究所)、『東大寺の暗号』(講談社+α文庫)、『新史論/書き替えられた古代史』 シリーズ(小学館新書)、 『天皇諡号が語る 古代史の真相』(祥伝社新書)、『台与の正体: 邪馬台国・卑弥呼の後継女王』『アメノヒボコ、謎の真相』(いずれも、河出書房新社)、異端の古代史シリーズ『古代神道と神社 天皇家の謎』『卑弥呼 封印された女王の鏡』『聖徳太子は誰に殺された』『捏造された神話 藤原氏の陰謀』『もうひとつの日本史 闇の修験道』『持統天皇 血塗られた皇祖神』『蘇我氏の正義 真説・大化の改新』(いずれも小社刊)など多数。新刊『神社が語る関東古代氏族』(祥伝社新書)



 


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  • 2015.07.18