■「みんなが校庭で遊んでいるのに、1人だけ教室の隅っこで本を読んだりしてる人」

ヒデ
だってさ、11人いるうち、1人だけ手が使えるんだよ? だから練習からそもそも、みんなと違うことをやっている。もちろんパス練習とか、一緒にやるメニューもあるけど、専門的な練習になったらササッと隅に行って、黙々とトレーニングしている。試合中もポツーンと取り残されるしさ。孤独に強い人じゃないと耐えられないと思うよ。イメージ的には、みんなが校庭で遊んでいるのに、1人だけ教室の隅っこで本を読んだりしてる人。完全にマイペースで、自分の世界に入り込める人。さみしがり屋さんには絶対ムリ! しかも、その状態でがんがんシュート打たれるんだから。

タケ
う~ん、SかMで言えばMなんですかね、GKって(笑)

ヒデ
そう思うよね。おまけにさ、みんなに「止めて当たり前」って思われてるから、GKがミスしようものなら、珍プレー扱いになっちゃったりもする。じゃあ逆に、GKが0点に抑えてチームが勝ったとき、GKが失敗したときと同じくらいの注目を浴びてるかといったら……どう? 浴びてると思う?

タケ
う~ん。たぶん、ゴール決めたストライカーとかのほうが注目されてると思います。

ヒデ
でしょ? ちなみにGKが0点に抑えた試合は、“クリーンシート”って呼ばれてる。ゴルフのスコアシートからきてるらしいんだけど、つまり、失点してないから、スコアシートがきれいなままってことだね。その“クリーンシート”を達成しても、GKがたいして褒められず、孤独に練習をつづけて、大きなミスをしようものなら、周囲から集中砲火を浴びる。損得で言えば、損だらけだよ。「それでも俺はGKが好きなんだ!」っていう人がいて、プロ選手まで上り詰めたのなら、もう“変態”に間違いない。と、僕は思う(笑)。

タケ
なるほど(笑)。GKのことは、すごく気になっているんですよ。何考えているのかなあって。あんな隅っこで、ひとりで。

ヒデ
誤解しないで欲しいんだけど、僕が“変態”って言ってるのは、褒め言葉だからね。外国人が「クレイジー」を褒め言葉で使うのと同じだよ。“狂気”というか、“常人離れ”というか、そういう独特の世界観がGKにはあると思うんだ。そういう目線でGKのプレーを見たら、面白くないかい?

タケ
すごく面白いと思います! ただ、僕はGKは普通にかっこいいと思いますよ。1対1とか、ものすごい大ピンチで思いっきり飛び込んで、ファインセーブしたときとか、すごくかっこいい。

ヒデ
うん、よ~く気持ちはわかる。でもさ、それが良いGKとは限らないんだ。

タケ
なぜですか?

ヒデ
そういうセービングをするGKは、ものすごくアッサリとかわされて、イージーなシュートで失点する可能性があるからだよ。だいたいさ、さっきも話したけどゴールの枠は横が7.32メートルもあるんだよ? 川島が4人寝転んで、ようやく届くかどうか……というくらいの広さがある。そんなところで1対1を完璧に止めるなんて、どだいムリな話だよ。なのに結構きびしいコースに来たシュートを止めるGKがいたら……。

タケ
う~ん見た目は派手でも、本当は当てずっぽうに飛び込んでたまたま止めちゃっただけという可能性があるということですか?

ヒデ
そういうこと。今回は止められたけど、本当はそういう大雑把なプレーをせずに、いつもゴールの中心にしっかりとポジションを取って、「普通に」シュートを止めているGKのほうが全体としてはパフォーマンスが上。そういうこともある。

タケ
なるほど。GKはいい悪いの評価が難しそうなポジションですね。

ヒデ
いちばん結果がシビアに跳ね返ってくるポジションだけど、実はいちばん、結果ベースで評価されるとプレー内容が狂うポジションでもある。誰に何を言われても、「俺はこのポジションから動かねえ! 隅っこにズバーンと決まるようなシュートは、俺の守備範囲じゃねえ!」って言い切っちゃうくらいの自信がないと、ブレちゃうよね。だからこそ僕は、GKが“狂気のポジション”だと思うわけさ。

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