尊敬に値しない無能な「上司」に悩まない対話術【福田和也】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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尊敬に値しない無能な「上司」に悩まない対話術【福田和也】

福田和也の対話術

 

 

■誰からも好かれていると勘違いしている無能な「上司」に対して

 

 普段、みなさんが敬語を使っている相手を、思い浮かべてみて下さい。取り引き相手や職場の上司、先輩、教師、義理の両親等々……。そういったいわゆる「目上」である相手にたいして、あなたは、真実のところどの程度の敬意をもっていますか。無論そのなかには尊敬に値する人も何人かいるでしょう。しかし大部分が、真面目に考えるとドウシヨウモない、何の取り柄もない人ばかりなのではないでしょうか。

 この「真面目に考えると」というところが大事です。というのは、きっとあなたはウスウスそれらの「目上」の人たちが、尊敬に値しない存在であることは認識していても、それを始終意識はしていないと思います。その無意識というか、いや実は彼らの無価値を認識していないワケではないので無意識ではないのです、その認識をカッコにいれているわけですね、とり敢えず意識しないことにしておく。それは、社会生活を円滑にすすめるためにとても重要なことです。

 もちろん、一旦カッコに入れたにもかかわらず、意識からどうしても消せないくらいに、ダメな人というのはいます。その人が「目上」であることが、あなたにとって苦痛でしょうがない相手もいるでしょう。人品も低劣なら、仕事も出来ず、センスは最悪で悪臭を放っているのに鈍感きわまりなく自分を善人で誰からも好かれている、と勘違いしているような存在はいますが、こういう人はどこにでもいます。もしもあなたに勇気とお金があるのならば、ヒットマンを雇って暗殺すればいいのですが、そんなクズに金と刑事犯に問われる危険を冒すのはアホらしい、という理性的立場に立つならば、彼が頓死(とんし)するか、左遷させられるという幸運を祈りつつ、地道に彼の立場がなくなるように職場で運動をしていくしかありません。

 ちょっと回り道をしてしまいました。大事なのは、それほど酷くない、尊敬に値しない大多数の人たちと、みなさんは毎日、密接にかかわり、彼らを「目上」として立てなければならないということです。

 仕事をし、生活をしていくためには、ほとんどの場合たいした尊敬に値しない人たちから、指示を受けたり、教えを受けたり、承認をもらったりしなければならないのです。

 もしも、そうした接触のたびに相手のつまらなさにたいして意識的であったら、どんなに仕事がつまらなく、生きていくことは味気ないでしょう。

 こうした味気なさを救うのが敬語の第一の機能なのです。

 つまり、敬語を使うことで、人は、相手の人品を忖度(そんたく)するというストレスから解放されるのです。敬語を使うことで、「目上」にたいして、その相手にたいする評価とはかかわりなく、あたかも敬意をもっているように接することができる。従い、教えを請うことが出来るのです。なんと便利なのでしょう。

 その点からすれば、敬語とは、敬意の表現ではなく、敬意の存否に関係なく相手と「目上」「目下」の関係を作るための言葉なのです。

 

 

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福田 和也

ふくだ かずや

1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院修士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授。93年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子賞、2002『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、06年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『昭和天皇』(全七部)、『悪と徳と 岸信介と未完の日本』『大宰相 原敬』『闘う書評』『罰あたりパラダイス』『人でなし稼業』『現代人は救われ得るか』『人間の器量』『死ぬことを学ぶ』『総理の値打ち』『総理の女』等がある。

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