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30年前。自動車は若者たちの「居場所」だった

30年間で「自動車」はこんなに変わった〈後編〉

■30年でクルマはどう変わったのか

 リスキーといえば、クルマの新規購入コストも、前述の通り現代の消費財とみるにはバカバカしく高い。価値観が多様化した現代、他に新規税金をかける対象もありそうだというのに、どうやら頭のお堅いお役人たちは、前例主義でいまだにクルマから重税を取ることに執着しているようで、このバカバカしいと思えるコストからは解放されそうもない。

 唯一の例外として2009年に施行されたエコカー減税があるが、これもこの優遇措置や環境性能批准のため各メーカーともダウンサイジングエンジン開発と燃費性能追求に躍起になり、結果どのクルマも個性が薄まりがちになってしまったという悪循環を生み出した。

 確かにV6やV8、V12と今や趣味性が高いと呼ばれてしまうことになったエンジンは今も現存しているが、超高級車を重税覚悟で買わなければならない感が、このエコカー減税により高まってしまったのも事実である。ますます現代のクルマは「買いたい特別なもの」から「買わなくてはならない道具」へと映ってしまう(一部の超お金持ちと熱愛家はそんなことを気にしないで好きなクルマを買うので除く。要するにここにも格差社会が訪れている)わけだ。

 ちょっと話を戻して、「ここ30年でクルマはどう変わったか?」というと、実はクルマ自体はあまり変わっていない。ハイブリッド技術、EV技術、自動運転技術が誕生し、対衝突性能や安全装備は年々充実、非金属(カーボン)製の車体も登場し、馬力も燃費も飛躍的に向上してきたが、市場で売っているほとんどのクルマは化石燃料を燃焼するエンジンで動き、指定された道路区間を走り、ドライバーが運転において責任を持つ。これは実は、自動車の誕生からほとんど変わっていないのだ。変わったのは、さまざまな環境要因で変化した、ユーザーのクルマに対する「思い」の方がよっぽど大きいのである。

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