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【ICT教育元年】1人1台端末をめぐるルールの現状

第66回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■文科省のルールはガイドラインか制約か

 ここでは「オンライン授業」には触れていない。持ち帰っての学習とは、あくまで宿題や自主学習を前提にしているのかもしれない。そして、意外にも萩生田文科相は学習以外の端末利用にも理解を示している。

「勉強に関係ないことにはいっさい使っちゃいけないとやるのが、本当に機器を使った新しい教育の環境の向上のためにプラスかマイナスかっていうことも考えなきゃならない」と述べているのだ。
 しかし、「うちの子は帰ってきてずっとゲームやっている、というのは望ましくないと思うので、そのへんのボリュームも含めて、だんだん練れていくんじゃないかと思います」とも続けている。
 手元に届いた1人1台ICT端末でゲームを楽しむのも認めるべきだとしながら、それにはルールが必要と言っている。

 これらの発言が文科省の方針であり、それを自治体として守らなければならないとなると大変だ。あれもやれ、これもやれと言っているようで、自由にしてはいけないと釘を刺しているような発言だからである。
 学校や教員も迷っているはずだ。ICT端末の利用を優先するように指示している自治体は多いが、どのように利用するのか具体的なことは示されていない。学校や教員に丸投げ状態なのだ。
 それでいて、「自由にしていいよ」というわけでもない。何をやっていいかは指示できないが、手綱だけは離すなというわけだ。

 そうした自治体にとって、2月16日会見での萩生田文科相の次の発言は朗報かもしれない。

「自治体の不安には応えていかなきゃならないので、Q&Aですべてチェックができるような形を3月末までに用意をしたいと思っています」

 これは文科省としてのルールを示すということだ。現状は端末の持ち帰りを前提に進めている自治体もあれば、持ち帰りを禁じる方針を固めつつある自治体もあるといった具合で、バラバラである。これらを統一する必要はないはずだが、文科省がルールを示せば、ほとんどの自治体はそれに従うだろう。自らの責任ではなく、文科省の責任にできるからだ。

 そして学校や教員は、そのルールを押し付けられることになる。ルールを決められて安心する学校や教員もいることだろう。ただ、自分たちなりにICT端末利用の可能性を広げようと考える学校や教員にとっては、そのルールはマイナス効果になってしまう。

 ともかく、萩生田文科相が口にした「Q&A」なるルールがどういうものになるかが注目される。それによって、今後のICT端末の利用の仕方、そしてGIGAスクールの姿が具体的に見えてくるのかもしれない。

 

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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