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1940年、海軍の運用方法を全世界的にガラリと変えた出来事

針路、パールハーバー! 目標、戦艦!! ~アメリカ太平洋艦隊の一大根拠地を叩いた奇襲作戦にまつわる航空エピソード~ 第1回

主力艦は巨大戦艦から航空母艦へ

 しかも、出撃機数が少ないというだけではない。当時、すでに日本海軍航空隊は97式艦上攻撃機、アメリカ海軍航空隊もダグラスTBD デヴァステイター艦上攻撃機という、全金属製で引込脚(ただし97式の一部の型式は固定脚)を備えた近代的な艦攻を運用していた。ところが「ジャッジメント」作戦で主力を担ったイギリス海軍航空隊のソードフィッシュは、使い勝手こそ良好ながら、第一次世界大戦時の航空機のような羽布張りで複葉の機体に固定脚を備えた、時代錯誤も甚だしい機体であった。にもかかわらず、これほどの戦果をあげたのである。

 かくして、それまでの世界の海軍の運用思想を支配していた大艦巨砲主義、つまり「でかい大砲」を積んで「分厚い装甲」を備える「頑丈な戦艦」を多数揃え、敵の「ご同輩」とガチンコの撃ち合いをはたして撃滅するという考え方は、艦砲の射程距離のはるか彼方で発艦した艦上機を用いて、空から敵艦隊を叩きのめすという航空主兵主義の前に完全に崩壊。海洋を支配する主力艦の地位は、巨砲を装備した堅固な防御を誇る巨大戦艦から、できるだけたくさんの艦上機を搭載できることが最優先の命題である、いわば「浮かぶ航空基地」たる航空母艦へとバトンタッチされることとなった。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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