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中国は「金正男擁立計画」を進めていた!

中国式の改革開放路線は許せなかった シリーズ!脱中国を図る北朝鮮③

金正男氏は暗殺され、真相は闇のまま

 北朝鮮亡命政府の政治体制は、自由民主主義体制とし、経済的には中国式の改革開放政策を綱領に採択しています。政治体制を自由民主主義だとしながらも、経済体制を中国式の改革開放政策を導入する理由は、北朝鮮亡命政府が中国からの支持と支援を得るためだからです。

 北朝鮮亡命政府が中国からの支持と支援を得るためには、事実上、中国に亡命して中国政府と太いパイプがある金正男氏を、その首班にする必要がありました。

 しかし金正男氏は、「自分が首班となれば、北朝鮮が、またもや世襲制になる」と言って首班になることを断ったと伝えられています。また、金正男氏はその首班を断った理由として、「政治には興味がない」と語ったとも言われています。

 金正恩政権は当然、北朝鮮亡命政府樹立の動向やそれを支援するアメリカ、そして中国の動きを掴んでいました。

 そして遂に、2017(平成29)年2月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港において金正男氏は、ベトナム人とインドネシア人の二人の女性から猛毒のVXガスを降りかけられて、殺害されたのです。

 金正男氏暗殺事件は、北朝鮮によるもの、取り分け金正恩委員長の指令によって行われたものだという憶測が世界中を駆け巡りました。

 このように金正男氏は、北朝鮮亡命政府の首班に担ぎ出されるのではないかとか、金正男氏を担ぎ出すクーデター計画があったのではないか、とかいう各種怪説が飛び交う中、暗殺されてしまったのです。その真相は闇のままです。

 ところで、金正男氏暗殺直後に、「殺されたのは私の父だ」として、パスポートを示しながら動画ビデオに登場したのが、金正男氏の長男である金ハンソル氏です。彼は〝千里馬民間防衛〟という組織に支援されながら、中国国内に潜んでいるとも言われています。今後中国は、金ハンソル氏を金正男氏の代わりに、対北朝鮮へのカードとして使う可能性もあるかと思われます。

(『北朝鮮の終幕』より構成)

〈シリーズ!脱中国を図る北朝鮮④は2日後に配信します。〉

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田中 健之

たなか たけゆき

 昭和38(1963)年、福岡市出身。歴史家。日露善隣協会々長。拓殖大学日本文化研究所附属近現代研究センター客員研究員を経て、現在、岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員、ロシア科学アカデミー東洋学研究所客員研究員、モスクワ市立教育大学外国語学部日本語学科客員研究員。 昭和58(1983)年に中国反体制組織『中国の春』の設立に関与し、平成元(1989)年6月4日に生じた天安門事件を支援、亡命者を庇護すると共に、中国民主運動家をはじめチベット、南モンゴル、ウイグルの民族独立革命家と長期にわたって交流を重ねている。 平成3(1991)年、ソ連崩壊と共にモスクワに渡り、ロシア各界に独自の人脈を築く。 一方、幼少より玄洋社、黒龍会の思想と行動に興味を抱き、長年、孫文の中華革命史およびアジア独立革命史上における玄洋社、黒龍会の歴史的、思想的な研究に従事、それに基づく独自の視点で、近現代史、思想史を論じている。 玄洋社初代社長平岡浩太郎の曾孫に当たり、黒龍会の内田良平の血脈道統を継ぐ親族。 著書に『昭和維新』(学研プラス)、『靖国に祀られざる人々』(学研パブリッシング)、『横浜中華街』(中央公論新社)、『実は日本人が大好きなロシア人』(宝島社)その他、共著、編著、雑誌など多数。



 


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