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一億総カメラマン時代の紅葉鑑賞

キーワードで振り返る平成30年史 第8回

レンズ付きフィルム、デジカメ、カメラ付きケータイ、スマホ
~平成8年(1996)~

illustration:TADASHI SATO

 実家から車で2時間弱のところに紅葉の名所がある。私が最初にそこを訪れたのは平成初期のこと。スケールの大きい紅葉と賑やかな出店を楽しみ、いざ帰路につこうとして、見納めに後ろを振り向いたら、当時はまだ珍しかったライトアップがなさていて、その壮大さに思わず息を呑んだ。今ならインスタ映え間違い無しの風景である。あの頃カメラを持ち歩いていた人は2割程度。多くの観光客は自らの目に景色を焼き付けていた。

 それから数年後の再訪時、カメラ持参の人の多さに驚かされる。特に多かったのは使い捨てカメラと呼ばれた「写ルンです」を始めとするレンズ付きフィルムの持参者。この画期的な商品は既に昭和61年に市場に出ていたが、多くの人が持ち歩くようになったのは平成8年くらいから。前年に全国のゲームセンターにプリクラことプリント倶楽部が登場、さらに機械の発達でフィルムの同時プリントが素人にもできるようになり、従来のカメラ屋さんや写真館に代わって街中にDPE店が乱立。フィルムを渡して1時間もすれば写真が見られる手頃さも手伝い世は一億総カメラマン時代に突入する。

 
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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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