「メッシは育てられないけど、メッシを止める選手は育てられる」断言するスペインサッカーのすごさ |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「メッシは育てられないけど、メッシを止める選手は育てられる」断言するスペインサッカーのすごさ

元サッカー日本代表・岩政がジャーナリストに逆取材-2

スペインの勝つための育成戦略

小澤 やっぱりバルセロナをライバルとして見ているから、バルセロナに勝つためには何をどうすればいいのか、バルセロナにないものは何か、そういう成長戦略を各クラブが持っているのが大きいのだと思います。

岩政 確かに、「PITCH LEVEL」にも少し触れましたが、僕もスペインの指導者と話をする機会がありました。スペインにもブラジルという大きな存在があって、選手が育つのを待っているだけではダメだということで、どう育てるかということを分析していった、と。スペインってそういう戦略を作る文化みたいなものがあるんですか?

小澤 国や社会としては全然ないんですけど、サッカーには不思議とあるんですよね。スペイン人に「スペイン発のイノベーションって何?」って聞くと、「チュッパチャプス」って言うくらいですから(笑)。でも、サッカーにはある。サッカーの指導者に関していえばスペイン的ではないんですよ。上にいる人はみんな細かいですし、その点日本にはすごく合うんじゃないかと当時から思っていました。

岩政 ということは、全てが国民性では語れないということですよね。日本とスペインの育成の違いもそうですしトップの選手もそうだと思うんですけど、接していて、喋っている言葉に関して違う感覚というのはありますか。

小澤 まず、スペインのクラブはメディア対応を育成選手に戦略的に落とし込んでいます。象徴的だったのが、宇佐美や柴崎といったプラチナ世代がいたU-17日本代表がビジャレアルでの国際大会に出ていたときのことです。そのとき、日本人で取材に来ていたのは僕ともうひとりくらいしかいなかったんですけど、日本はメディア対応が悪かった。入ってくるな、という感じだったんです。でも、レアル・マドリードのユースに取材をしたら、監督自ら選手を引っ張ってきて、この選手は将来こうなると思うよって事前にレクチャーまでしてくれました。クラブとしてどういう選手を売り出したいのか、メディア対応も選手育成の場として活用してるんだ、ということがよくわかりました。2009年のことですよ。こういうことも日本はしっかりやっていかないといけないんじゃないかな、と当時思いましたね。

 

岩政 そうなんですか。しかし、書き手っていろいろなところが見れるんですね!

小澤 いいとこ取り、つまみ食いができるんで(笑)。色んなところで色んな人に話を聞けるっていうのが強みですね。

岩政 でも全部を見るわけにはいかないじゃないですか。それはどうやって決めていくんですか。

小澤 僕自身は、広く多くよりも、ある程度一つのことを見ていってそれに共通していくものに加勢していったほうがいいかなと思っています。僕の場合はスペインですよね。

岩政 「広く」より「深く」だと、どういうものが見えてくると思いますか。

小澤 サッカーというのは、判断の連続なわけじゃないですか。まず見えてくるのはその判断基準というのが国民性とか国の趣味嗜好にかなり左右されるな、ということですかね。そして、スペインの場合はそこに多様性があって今は縦に速いサッカーも出てきていますけど、それでもやっぱり美的意識、クライフのバルセロナの哲学というのが浸透している。できれば主導権を握りたいし、相手を制圧して人よりもボールを動かしたいということがあります。そういう美意識とか哲学が見えてきますよね。

岩政 哲学に関していうと、スペインと日本の「ボールを回す」ということについて、僕が違いを感じるのが、スペインってボールを回す方法論がより具体化されている感覚があります。どこに立てばいい、とか、どういう人を見ておけばいい、ということが浸透している気がするんです。日本の場合、うまい選手は「足元の技術に長けている選手」であって、個々のテクニックを育てることがうまいパス回しに繋がると思っているふしがあるんじゃないかと。スペインの場合は、それをもっとしっかり説明できるイメージというのか……。それってやっぱり歴史ですか? 長くやってきているものだから。

小澤 それはもう、ラ・リーガの1部にいるチームのプロクラブをピラミッドの頂上にしたメソッドを、各地域で落とし込んでいますから。国としてそうしているわけです。どこの地域に行っても、それぞれ分厚い指導書を作っていて、クラブとしてのメソッドを持っています。プレーモデルをきちんと説明できるくらい言語化されていますよね。
岩政大樹が書き下ろした“パートナー”、内田篤人への思いが泣ける。

岩政 あぁー……、じゃあ下の年代の指導者もみんなそれを共通に持っている?

小澤 持っていますし、基本的にそれを理解してる人を指導者として連れてきているんで、評価もしやすいんじゃないですか。しかも、連れてきたときに「ここまではクラブのプレーモデルの中でやります。でもここからは監督の裁量でやっていいです」という基準もはっきり提示しいますから、監督もすごくやりやすいのなかと思います。

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