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あなたは「ポケットピカチュウ」を覚えていますか?

キーワードで振り返る平成30年史 第6回

ポケットピカチュウ
~平成10年(1998)~

 昨夏リリースされるや、世界中でブームを巻き起こしたスマホゲームアプリと言えば「ポケモンGO」。東京お台場や大阪天保山などポケモンの巣と呼ばれる場所を、老若男女多くの人々がレアポケモンを求めて徘徊し、社会現象にまでなった。そんなポケモンGOも、歩きスマホや運転中のプレイなどが事故に繋がるおそれがあることが指摘され、単純なゲームスタイルも飽きを呼び徐々にプレイヤーは減少。もはやオワコンとさえ言われていた。

 しかし、リリース一周年のタイミングで配信元が新システムや「伝説」と呼ばれるポケモンの配信を開始すると、ブームは一気に再燃。この夏の横浜で行われたイベントは猛暑の中、全国から大勢のポケモンマスターを呼び集めた。

 ところで、ポケモンと歩きゲーの組み合わせは今回が初めてではない。平成10年に登場したポケモンGOのご先祖様と言えるのが「ポケットピカチュウ」。当時はスマホなどもちろんなく、ゲーム機は単色液晶画面に十字キー、その他幾つかのボタンがついただけのもの。本体の突起をベルトにひっかけることができ、これを携帯して歩くと歩数に応じて画面の中のピカチュウが様々なリアクションを取るというもの。健康にはウォーキングが良いという散歩を奨励する空気とあいまって、本体価格2500円のこの商品は一時は店頭で品切れになるほど売れた。

イラスト提供:いらすとや

 このポケットピカチュウの登場より一年以上前に、このジャンルのパイオニアとなっていたのが「てくてくエンジェル」。こちらは当時流行中の育てゲーにデジタル万歩計をプラスしたような携帯ゲーム。現在より幼児二人分ほど軽かった私は当時体重の増加が始まったことに危機感を抱いており、早速このゲームに飛びついた。買ったばかりの頃はとにかく目的もなく歩き回る。
 だが元来飽きっぽい私は、一週間もするとエンジェルを食卓に放置するようになる。それからさらに数日後、「ひさしぶりに歩くか」とてくてくエンジェルを起動させ画面を見ると、そこにはひらがなのエンジェルからの手紙が。
「たびにでます。さがさないでください」
 私は自身の飽きっぽさを呪い、食卓に突っ伏してただただ涙したのであった。

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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