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熱い! カカオの自然発酵 

PNG(パプアニューギニア)マヌス島のカカオ 第5回

銀座「エスキス」のシェフ・パティシエである成田一世が、収穫からサロン・ド・ショコラ出展までチョコレート作りの全行程をレポートする連載です!

カカオ、発酵!

写真:photolibrary

 木箱の中でバナナの皮に覆われたカカオは自然に発酵し始めるが、1日に1度天地返しして酸素を供給し発酵を促していく。木箱に入れた時点で常温に近い30度くらいだったのが、2日目にいきなり54度くらいまで上がっていたのにはびっくりした。
 この時点で一度混ぜようと思ったが、畳1畳ほどの木箱に入ったカカオの深さは約1メートル。混ぜるには腰まで入らねばならない。熱くて足も入れられないので内側と外側を少し混ぜただけで様子をみることにした。

 3日目は熱さを我慢して箱に入り全体を混ぜた。洗面器やオールで混ぜていると、発酵過程で二酸化炭素が発生するため酸欠で頭がクラクラしてくる。4日目にはカカオ豆を包んでいたカカオパルプが剥がれ始め、5日目には完全に外れた。温度もその頃には40度くらいに下がった。
 わざと雑に作られた木箱から漏れ出す液体と、カカオパルプの甘酸っぱい匂いに誘われカカオの受粉をする小さな虫が集まってくるが、発酵と共に匂いはなくなり虫もいなくなった。何より虫も寄りつけぬ高温だ。心配していた虫の混入は杞憂だった。

 発酵が進むにつれ、豆の断面は外側から紫色に変わっていき、食べると酸味を感じるようになる。この具合を見ながら発酵をいつ止めるかを決める。今回は、6日目、7日目、8日目と分けて発酵を止め天日干しにすることにした。

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成田 一世

なりた かずとし

銀座「エスキス」シェフ・パティシエ。「ピエール・エルメ・パリ」「ジョエル・ロブション」などで腕を磨き’12年に帰国。現在に至る。’17年「ASIA'S BEST 50 RESTAURANTS2017」にて「Asia's Best Pastry Chef」受賞。


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