怪物は怪物を生み出す

 今回の『9人の怪物を巡る物語』では、この6人に、ダルビッシュ有、大谷翔平、そして元祖怪物の江川卓の3人を加えた9人のドラマが描かれている。ちなみに、本の帯の9人の並びは、「1.松坂大輔」「2.斎藤佑樹」「3.桑田真澄」「4.清原和博」「5.松井秀喜」「6.ダルビッシュ有」「7.大谷翔平」「8.清宮幸太郎」「9.江川卓」の順。4番清原というのが、いかにもそれらしい。

 しかし、甲子園ファンには一家言持つ人が多いもの。本が発売されると、9人の怪物のセレクションをめぐり、SNSなどでさまざまな意見が飛び交った。高木さんも「9人の怪物に関しては賛否両論がありました」と苦笑いする。

「多かったのは『なんで斎藤佑樹が入っていてマー君(田中将大)がいないんだ』『なんで中田翔がいないんだ』という意見ですね。清宮選手に関しても『まだ甲子園で何も成し遂げていないじゃないか』『他の8人と同列にして語るのはおかしい』とか、いろんな意見をいただきました」(高木さん)

 怪物といっても、人によって捉え方はそれぞれ微妙に異なる。「怪物を巡る物語」という以上は、「怪物とは何か」というある種の定義が必要になるのだ。

では、『Number』が考える「怪物」とは何か? 高木さんによれば、それはひとつに、対戦相手など、第三者が規定した怪物ということ。もうひとつは、周りの人たちに影響を与える、輝かせることのできる存在だという。

「これまで『Number』が作ってきた甲子園特集で何かできないかと思ったときに、『怪物』というキーワードが浮かんだんです。でも、松井秀喜が連続5敬遠を語っても、片側から見た真実にしかならない。そもそも、自分で自分のことを怪物と言えるのは江川さんぐらいでしょう。やっぱり、『Number』らしいのは、対戦相手などの第三者が語る怪物。『他者という視点』で怪物を選んだので、世間が考える怪物よりも広いかもしれません」(高木さん)

 

 たとえば、松坂大輔の章では、1998年夏の準決勝、名勝負のひとつに数えられる横浜と明徳義塾の一戦が審判によって語られている。松坂大輔という怪物投手の真骨頂を、審判の視点から明らかにしているのだ。

 松井秀喜の章でも、1992年夏の星稜と明徳義塾の一戦、松井秀喜の名を一躍知らしめたあの連続5敬遠について、松井の後を打つ星稜の5番打者・月岩信成にスポットを当て、月岩の証言を通じて描いている。

 なかでも唸らされたのは、斎藤佑樹の章に出てくる2006年夏の2回戦、早稲田実業と大阪桐蔭の一戦。このとき、2年生ながら大阪桐蔭の4番の座に座っていた中田翔自らが、斎藤との17球の勝負を振り返っているのである。