◆指導に熱心さが求められるから、余計に苦しい

 加えて「勝たせてほしい」「上達させてほしい」という保護者からの期待も、教師にとって大きな重圧になる。

 前出の神原さんは、部活の保護者会で「試合に出る選手はどういう基準で選んでるのか?」とか「決め方がおかしいのではないか」と責められたこともあった。少しばかりほかの生徒より上手い子どもたちの親からは「もっと上達させて、勝つ味を教えて欲しい」と要求された。

 思えば、今の親世代は部活に打ち込んだ世代。「部活を熱心に指導するのがよい教師」というイメージが強い。よって、わが子の部活顧問にもそれを求めるのだろう。

 文部科学省は1997年の「運動部活動の在り方に関する調査研究報告書」において、運動部の休養日の設定例として「中学校は週2日以上」「高校は週1日以上」、練習時間についても「平日は2〜3時間程度以内」「土日は3〜4時間程度以内」とする目安を示している。だが、現状はまったく守られていない。

 スポーツ庁の昨年度の調査結果によると、中学校の運動部活で1週間当たりの休養日を設けていない学校が22.4%もあった。週に1日休みが54.2%。つまり、半数以上の中学校の運動部が週に6日以上活動していると考えられる。

 実は10年以上前からこの状況は変わらない。ベネッセが調査した「第1回・2回子ども生活実態基本調査」によると、中学校における1週間当たりの活動日数は、2004年に「5日以内」と、週に1日休みがあるかないかの「6日以上」が半々だったのが、5年後の09年には「6日以上」が6割近くに増加。この傾向は高校も同様で、部活がよりハードになっている現状が明らかになっている。

 ハードになった要因はさまざまだが、ひとつ挙げるとすれば、高校・大学受験にスポーツ推薦やAO入試のような、部活実績や「学校でやってきたこと」が評価基準になる選考方法が定着したことがある。推薦合格者を出せば、部活顧問の実績になる。部活成績がそのまま教師の評価になる傾向がより色濃くなったようだ。

 その後、神原さんは教師にとっての部活問題を考えるブログ「部活動の顧問は拒否するべし!」を開設。たったひとりで顧問を拒否し続けるなか、SNSで部活問題を発信する仲間と出会った。

 2015年12月、首都圏やそのほかの地方で公立中学校に勤める教員ら5人と「部活問題対策プロジェクト」を結成。オンライン署名サービス「チェンジ・オルグ」で署名を始める。

「部活がブラックなのは生徒だけじゃない。教師にとってもブラックだ」と声をあげた。
「部活がブラック過ぎて倒れそう。顧問をする、しないの選択権をください!」
「選べる自由を。全員顧問制は違法だ」
 この呼び掛けに3カ月弱で3万人近くの署名が集まった。

次のページ 「子どものためだから」という考えは、教師の身を滅ぼしかねない