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元エース潜水艦長が指摘。自衛官には有事における覚悟が無いのか

日本の軍事力 自衛隊を阻むものの正体④

現代日本社会では、自衛隊はきわめてモラルの高い集団であると断言してもいい。しかし、軍人としてのモラルはどうか。元エース潜水艦長であり、著書『日本の軍事力 自衛隊の本当の実力』が好評の中村秀樹氏が保身と立身が最優先になっている自衛官のサラリーマン化を指摘する。

平時の「人間としてのモラル」が問題ではない

航空自衛隊 〝F15〟別名イーグル
出典:航空自衛隊ホームページ (http://www.mod.go.jp/asdf/equipment/sentouki/F-15/images/gallery/photo28.jpg)

 誤解のないように最初に断っておきます。二十数万人の自衛官個々の人間は、真面目な人がほとんどです。官庁の中でも自衛隊の腰の低さは随一だし、平時における規律正しさは他国の軍隊に比べても遜色はありません。

 また、海外に派遣される自衛隊の評価もきわめて高いのは事実です。国内の災害派遣でも、警察や消防に負けず劣らず献身的に活動しています。さらに大規模な運動競技やお祭りには、自衛隊の協力が欠かせません。

  記憶に新しいところでは、3・11や熊本地震での活躍があります 。海外での活動でも現地の評価は非常に高く、特に発展途上国でのこまめな対応は、 他の先進国の軍隊には見られない特長です。

 マスコミは、自衛官の不祥事ならどんな些細なことでも大きく報道するから、 不良自衛官が多いような印象を持っている人もいるかもしれません。

 しかし逆に言えば マスコミが鵜の目鷹の目で徹底して監視し、細大漏らさず報道していても、二十数万人の自衛官の起こす問題は数える程度です。

 防衛省事務官(自衛官ではない背広組)の不祥事も自衛官と混同しやすいから、さらに実数は少ないと思っていていいでしょう。収賄で世間を騒がす事件も「誤れるシビリアンコントロール」 下にある限られた権限の自衛官ではなく、防衛省を支配している背広官僚によるものです。事件を隠蔽しやすいため不祥事が全部顕在しない警察官などと比較しても 、決して劣るとは思いません。

 教師や一般公務員よりずっとマシです 。現代日本社会では、自衛隊はきわめてモラルの高い集団であると断言してもいいでしょう。私が自衛隊OBだから言うわけではありません。 偏見を持たずに自衛官に接する機会のある国民は 、まず自衛隊に好感を持つのではないでしょうか。

 しかし私がここで語りたいのは 、そうした平時における「人間としてのモラル」のことではありません。自衛官、すなわち軍人としてのモラルです。自覚、あるいは覚悟と言い換えてもいいでしょう。

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中村 秀樹

なかむら ひでき

昭和25年生まれ、福岡県出身、防衛大学校18期。潜水艦艦長のほか、海上幕僚監部技術部、護衛艦隊運用幕僚、情報本部分析部、幹部学校教官、防衛研究所戦史部等勤務。平成17年退官。著書に『本当の潜水艦の戦い方』『本当の特殊潜航艇の戦い』『これが潜水艦だ』『尖閣諸島沖海戦』『第二次日露戦争』『日韓戦争』(潮書房光人社NF文庫)『潜水艦完全ファイル』(笠倉出版社)などがある。


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